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リリーのすべてのmofaのネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

【ゲルダとアイナーの微妙な
ラインを描く秀作】

始めから終わりまで、切なくて切なくて。

そもそも、この2人の人生を、2時間ほどで描くには、困難なのである。
女性になりたいと願うアイナーの人生と、
それを支えるゲルダの人生。

どちらも、苦難に満ち、愛と切なさに彩られている。

どちらか一方だけを描けば、どちらか一方が、悪者になる。
そんな微妙なラインを、この作品は、見事に捉えていると思うのだ。

妻として愛しながらも、自分の本当の願いに気づいたアイナー。
ゲルダへの贖罪と、甘えの中で、自分の願いを叶えていく。
その過程は、まるで、姉を慕うかのような母を慕うかのような、
親友を慕うかのような、そんな愛へと変貌を遂げていく。

ゲルダもまた、自分を裏切り続けるアイナーを、
嫌悪し、彼の本当の願いに気付かせてしまった自分を呪い、
このカオスから、解き放たれたい・・と、願う。

けれど、アイナーへの愛が、結局はそうさせてはくれない。
彼女の母性本能が働くかのように、ゲルダはアイナーを最期まで支えていく。

お互いの愛が、苦悩と葛藤の中で、形を少しづつ変えていく様が、
本当に、ただただ、切ない。

その苦悩と葛藤の中から、お互いを捨て、飛び出すことも出来た。
けれど、そうする事は出来ず、最期のその瞬間まで、
アイナーとゲルダは、身を寄せ合う。
そこには、男と女だけの愛ではない、確かな愛が存在したと、
感じさせてくれる作品だ。

エディ・レッドメインは、素晴らしい。
自分の中に眠る女性の部分を、見事に演じていた。
特に、初めてストッキングを身にする場面は、官能的であり、
非常に魅力的な場面だった。

リリーは、1度目の手術後、女性としてデパートで働いたりと、
その人生を謳歌する。

 自分の新たな人生を手に入れ、ゲルダのことなど、眼中になくなっていく。
ゲルダに受け入れられているという安心感と甘え。
けれど、リリーがその人生を謳歌するほど、ゲルダは、複雑で、取り残されていく。

このまま2人の人生が進んでいけば・・・・

リリーへの愛は、憎しみに変わっていったのかも知れない。


 ゲルダの愛は、あくまでも、孤独と戦うアイナーに寄り添ってこそ、成立したのだと思うからだ。アイナーを支えるのは私しかいないという使命感。

それが、必要でなくなった時。

それこそが、この2人にとって、大きな大きな試練になったのかも知れない。

けれど、そうなる前に、リリーは逝ってしまう。

アイナーが逝くその時まで、そばにいたのは、
ゲルダだった。
リリーの人生を一瞬でも謳歌したアイナー。
そして、アイナーを彼女の幸せの絶頂まで支え続けたゲルダ。

2人の愛が、見事に昇華されたからこそ、
2人の人生は、愛に彩られたハッピーエンドであったと信じたい。
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