つぼかび

軽蔑のつぼかびのレビュー・感想・評価

軽蔑(1963年製作の映画)
4.0
ハリウッド的要求に押しつぶされそうな『オデュッセイア』をリライトする脚本家とその妻の間の『ユリシーズ』。ちょっとゴダールが観たい気分だったので…。フリッツ・ラングが本人役で出演。今日はゴダールと波長が合う日だったのでけっこう楽しめた。

ゴダールは2年前に『東風』を観て以来だと思うけど、ストーリーは至極完結。斜陽な映画産業界を背景に、オデュッセウスとペネロペイアが投影された主人公と妻のなんとも言えない関係の揺らぎと破綻を描く。

映画製作の映画ゆえ、唐突に挿入されるラッシュのような短いカットの連続や暗転のような照明効果、不意に動き出すカメラワーク、ざらついた映像の質感は、今どの次元の映像を観ているのかが定かではなくなる異質感で迫る。白を基調とした部屋の中にあって強烈な赤の家具やタオルはインパクト抜群。部屋の入り口やドア、窓などがスクリーンを切り取るスクリーンとして機能していて奥行があるようで平面的でもあるような不思議な感覚の映像が続く。特に人物が壁の後ろを横切って移動するシーンは魔術的な映像体験。
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