すずや

光をくれた人のすずやのレビュー・感想・評価

光をくれた人(2016年製作の映画)
4.3
サントラが大好きで前からずっと気になっていた映画なのに、内容を見て食指が伸びずにいたけど、今日意を決して観てみた。本当に辛くて涙を堪えられなかったけど、後味はとても良いものだった。

結局『光をくれた人』というのは、トムから見たイザベルだったのかな…戦争を生き延びた男に愛を与えた妻。まるで水平線から現れた太陽が海を照らすように、幸せが浸透していく。
トムが子供を育てる選択をしてしまったのは、イザベルの状況上しょうがなかったことかもしれない。あのようなタイミングで流れ着いたこと自体、神の与えた祝福だったのかもしれない。それでも綻びは埋まらず、トムはすべてを背負い込んでしまう。
でも、結局1番つらい思いをしたのをしたのはイザベルじゃないかと思う。自分がした選択を償う機会さえ与えられず、子供が辛い思いをしている様を見ているしかない。
ルーシーがハナに対して「本当のママじゃない」っていうのもつらかった。ハナはずっと子供は死んだと思ってて、ずっと取り戻そうとしてきて、やっと戻ってきたのに、自分をママとはみなしてくれないのが辛すぎる。

でも、少し心が暖まることもあった。
ハナがルーシーのためにとった行動。イザベルがトムを、トムがイザベルを想ってとった行動。破滅に導く行動もあれど、愛おしくて、暖かった。

結局、子供を引き取る行為が正しかったのかはわからない。イザベルのエゴで子供の苦しみを増したのかもしれない。でも、あのまま養子に出していたら、ルーシーが幸せになったのかもわからない。そう思うと、ああなるしかなかったのかな、と。
でもあのようなラストを迎えられたのは本当に幸せだし、心地良さで映画を見終えられた理由だと思う。(少し『ブロークバック・マウンテン』を思い出さずにいられないラストだった)

そして、アレクサンドル・デスプラの大好きなテーマのひとつ、The light between oceans。本当に素敵なピアノのテーマとしてよく生きていて、嬉しくなった。
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