さあや

僕と世界の方程式のさあやのレビュー・感想・評価

僕と世界の方程式(2014年製作の映画)
4.3
最高のラストシーンだった。

障がいそのものよりも、それを取り巻く愛にフォーカスすることで問題を誤魔化すんじゃなく共生している感じがあって、そこらへんがとっても好みで良かったなあ

どんなに難解な数学の方程式だろうと解けていたネイサンが人の愛の方程式だけはどうしても理解することができなくて、答えのない恋愛に戸惑い怖気付くネイサンに愛を伝えようとするお母さんの言葉と、しょっぱなのパパの言葉にとても心を打たれた。自閉症の息子に対して、魔法使いという例えを使うこと、特別扱いをするでもなく、周りと違うということを刷り込む訳でもなく、人と人が愛し合うことの大切さ尊さをきちんと幼いネイサンに伝えること、なかなかできることじゃないと思う。ありのままのその子自身を肯定して愛を伝えることが何よりも大切なんだな、と自身の事を振り返りながらほんとそうだよなとしみじみしました。

親としての葛藤、もどかしさ、希望、そしてネイサン本人の生きづらさや自分でもどうしたらいいのか分からないというしんどさ
ルークのように、何か特別な能力がなければ自分はただの変人なのか、言葉の圧力に耐えながらもその期待に応えなければという責任感、期待を裏切るかもしれないという恐怖、息抜きが自分で上手くいかない分、そういったものと戦い続ける計り知れない辛さが伝わってきてとっても辛かった。
一方で人間関係での摩擦に戸惑い、でもどこかで諦めているネイサンが少しづつそのしんどさをどうにかしようと行動が少しづつ変わっていく様に、愛の原動力の大きさも感じた。1人でいたら生まれない感情とか、他者と関わることで初めて感じる歯痒さとか高揚感とか、そういうものを改めて大切にしようと思った。チャン・メイを見つめるネイサンの目がとっても優しくて嬉しそうで胸がギュッてなる、なんという顔面演技力...と思って調べたらずっと観れてない「縞模様のパジャマの少年」の主演なのね、はやく借りなきゃ...

あまり関係はないけど先生への非難でホーキングを例にしてるの良かったな、先生はとっても良い人だけど決して強い人じゃないし自分に嘘をつくし、とても人間らしい人だなあと思った。 この後大好きな「博士と彼女のセオリー」を観返した。たしかにホーキングのようにどんな状況下にあっても諦めないこと、進み続けることはもちろん本当にすごい事なんだけど、逃げることだって踏みとどまることだって生きる力なんじゃないか、やり直すチャンスなんて自分でいくらでも作り出せるものなんじゃないか、って1回目とはまた違う見方ができて面白かった。

見えている世界は一人ひとりみんな違うし、同じ言葉をかけられても一人ひとり受け取り方が違うのは当たり前で、正解なんてものはないけれど、だからこそ言葉の中の思いやりや気遣いを大事にしていかなくてはなと思いました。
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