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ヒメアノ〜ルのeknのネタバレレビュー・内容・結末

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


“アノール”とはトカゲの1科である。イグアナ科アノール属に含まれるトカゲの総称。(ヒメアノール=ヒメトカゲ)となるが、“ヒメトカゲ”とは体長10㎝ほどの猛禽類のエサにもなる小型爬虫類。
つまり、“ヒメアノ~ル”とは強者の餌となる弱者を意味する。
――映画「ヒメアノ~ル」公式サイト

不思議なタイトルとトカゲのデザインはつまり、高校時代にイジメられていた森田を指す。食物連鎖とスクールカーストのピラミッドのイメージを重ねた秀逸なタイトルである。(イジメられる人間=弱者ではない。)

そのタイトルが震えるほど完璧なタイミングで現れる。それまでのコメディタッチな演出は、全てこの瞬間のためのフリでしかなく、下手したらコメディ演出のひとつと勘違いされかねない森田のサイコパスな人間性が、ここから狂気として露になっていく。

殺人シーンを始め、目を瞑りたくなるようなブラックな演出が続くが、イジメとセックスのカットバックはその最たるもの。あまりにも酷なので苦笑してしまった。

しかし、童貞の岡田に感情移入して彼と同じくユカの無神経な発言に傷ついていた自分も、気づけば森田の心情に共感していたのは面白い。過去のフラッシュバックや森田の表情を何度も見させられるうちに、彼の視点とリンクさせられる。激しく傷つけられ、激しく恐れ、激しく怒る。なので、ラストの回想がただ切ない。
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