Yui

ウイークエンドのYuiのレビュー・感想・評価

ウイークエンド(1967年製作の映画)
3.6
「彼女について私が知っている、二、三の事柄」が今まで観たゴダールの中で1番難解だと思っていたけどこちらが暫定1位に輝いた!まさに宇宙にさまよった映画、鉄屑から見つかった映画。


ヌーヴェルヴァーグって基本的にそのようなものを匂わせる台詞や演出があっても、直接的なエログロって控えめだと個人的には思っている。ゴダールの映画も割とそうでそのようなシーンはサラッとしている印象だったけど今回は結構どちらもそれなりにぶっ込んできたなという感じ…。
ヒロインのコリーヌが衝撃的な自身の性体験を語るシーン、長い!あのシーンって必要なのか!必要にしても長すぎないか!あとは車の渋滞シーンも長い!延々と鳴り続けるクラクション、イライラして喧嘩する人々、渋滞に飽きちゃってチェスをしたりキャッチボールをする人々、段々明らかになる事故現場、転がる死体、あるかもしれない週末の風景から徐々に不穏さを感じるあの長回しは必要だったとは思う。でも10分は流石に長すぎるって!

めちゃくちゃ堂々と「皆殺しの天使」のオマージュをしていたっぽいし、(堂々とオマージュするぞ!とテロップがでていた)その他にもルイスブニュエルらしさを出しまくっていたみたいなんだけど実は1つも観れてないからピンときてなくて悔しい!ブニュエルを必ず履修すると堅く誓った。

ゴダールの映画にちょっとだけJPレオがでてくるとすごく安心する。公衆電話で歌いながら電話相手と話しているところが可愛い。日本車に乗っていて結構気に入ってくれてる様子だったのもなんだか嬉しかった。
ドラムのリズムに乗せて詩を言うシーン、あれってラップなのでは? あのフリースタイル感がとても良かった。

ゴダールのやりたい放題なイカレ具合でもはやカルト映画だし、ぶっ飛びすぎている中で主人公夫婦の 、"なんて映画だ、病人ばっかり!" "あなたが悪い、出演するから!" という台詞には笑った。途中で西洋史がぶっ込まれるシーンでも夫婦2人とも退屈そうにしていて、観客の気持ちを(全ての観客とは言えないけど)代弁してくれているようで面白かった。

ゴダールが商業映画との決別を決めてから撮った本作。"週末"はまさに"終末"であり、映画は1つの意味ではない何重もの意味を含んだ"終わり"へと向かっていく。エロもグロもカニバリズムも政治批判も全てこの映画にぶつける。タブーなんて言葉は彼の辞書には最早存在しない。 全くこの人の頭の中はどうなっているんだ…。
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