キャッチ30

ウイークエンドのキャッチ30のレビュー・感想・評価

ウイークエンド(1967年製作の映画)
3.4
 シュールでカオスな映画だ。まるで、地獄巡りを見ているような感覚。監督のゴダールは観客に共感を求めない。

 パリに住むブルジョワ階級のロランとコリーヌのデュラン夫妻は土曜日の朝、田舎にある妻の実家に車で旅に出る。二人の間には既に愛は無く、それぞれに愛人がいた。今度の旅行もコリーヌの父親を毒殺して、遺産を相続する為のもので、遺産が手に入ればパートナーの殺害も計画していた。だが、道中で長蛇列の渋滞に遭遇してしまう。然も、道端には事故を起こした自動車と血塗れの死体が置かれている。そこから彼等の歯車は狂い始める……。

 車は大破し、ロランとコリーヌの衣服はボロボロになっていく。彼等が旅で遭遇する人々はおかしな人間ばかりだ。ピストルを振り回す狂信的な青年とその彼女、親指太郎とエミリー・ブロンテのコスプレをした男女、電話ボックスでシャンソンを歌いながら電話する青年。挙げ句の果てには、FLSOという人肉を食する過激派集団に捕えられてしまう。

 ゴダールは映像の断片を繋ぎ合わせ、悪夢のような体験の数々を描写する。車と人間の衝突や言葉の齟齬を繰り返し、映画はとんでもない方向に舵を切る。物語を追うよりも、映像に浸かる方が楽しめるかもしれない。