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父を探してのmOjakoのネタバレレビュー・内容・結末

父を探して(2013年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

綺麗な画と可愛らしく見えるキャラクターからは想像出来ないくらい恐ろしく哀しく優しい不思議な映画だなぁと思いました。

全編セリフがなくクレヨンで描いたような手書き感溢れる画面は今まで見たことがない映画体験で、最初の方は背景が真っ白だったりするので"これは主人公の内面を表現してるのかなぁ?"とか"子供時代を回想した話なのか?"とか色々考えるのが楽しかったです。
ストーリーは父親を探しに家を出た少年が世界を目の当たりにするといった話。その過程で様々な出会いを経験しつつ綿花農園、織布工場なんかを巡りファンタジックな世界観の中で市井の人々のリアルな生活を経験していくと。

恐ろしかった部分は織布工場が次々機械化され人々は職を失い路頭に迷うところ。そこだけ実写映像が挿入されて強烈に印象に残っているんですが、もちろんこれはテクノロジーの進化した人類に警鐘を鳴らす的なことですよね。ただ個人的にはもうちょっと広い意味合いなのかなと思っていて、要は人間にとって本当に必要なものとは何かってことが提示したいんじゃないかと。 今は色んなものが増えていって確かに便利だけどそれって本当に必要?みたいなものっていっぱいあるじゃないですか。例えば映画もそう。デジタルやらCGやら3Dやら色んな手法が濫用してるけど実際には本当に語りたいことと人が手をかけて描いた美しい画と素晴らしい音楽、それだけあれば十分なんじゃないのかと。この辺はディズニーの「プリンセスと魔法のキス」とか最近だと「コングレス未来学会議」とかにも通じるテーマかなと思います。
それと冒頭とラストに万華鏡のような模様が映し出されますが、これも物事を一面的に解釈するなってことなのかなと。そのままではただの点だけども引いてみると美しい模様が現れたりその逆然りってことは色んなシチュエーションに当てはめて考えられる。便利なテクノロジーだったり社会のシステムだったり今となっては自分達にとってそれが全てだと思ってることに対して案外そうでもないかもよっていう視点を持つことはとっても大事なことだなぁと思いました。

ちなみに公式サイトで公開されているドキュメンタリーが凄く面白くて作品理解の助けにもなったのでおすすめです。それを見るとこの作品が通常の映画作りとはかなり違った特殊な作品というのがよくわかる。構成なんかは相当考えてるけど発想自体は監督の頭の中にあるものそのまま映画に焼き付けたような感じの作り方をしていて改めてスゴイ作品だなぁと思えます。個人的にも全てを理解できた気は全くしないですがとにかく圧倒されてしまう映画体験でした。
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