父を探して(2013年製作の映画)

O Menino e o Mundo/The Boy and the World

上映日:2016年03月19日

製作国:
  • ブラジル
  • / 上映時間:80分
    監督
    アレ・アブレル
    脚本
    アレ・アブレル

    「父を探して」に投稿された感想・レビュー

    えーこ
    えーこの感想・レビュー
    4日
    4.1

    このレビューはネタバレを含みます

    無限に広がる万華鏡のように、
    模様がどんどん広がっていくオープニングに吸い込まれそうになる。
    原題?は『少年と世界』
    世界は驚きに満ちている。

    セリフはなく、絵と音楽だけで綴られるこの物語は、まるで絵本の世界がそのまま動き出したみたいで、どこまでも続くカラフルな色彩に目を奪われる。
    乗り物は動物のように擬人化?され、
    奏でる音楽はシャボンのように形になって舞い上がる。
    でも旅する少年が目にするものは、
    格差社会、失業問題、森林伐採、環境汚染、独裁政権…
    クレヨン、色鉛筆、油絵具、コラージュなんかで描かれた可愛らしい画で社会を風刺する。

    あー、そーゆーことかぁ。。
    少年は大人になり、社会に出て、働いて、
    年老いて、故郷に戻り、過去を懐かしむ。
    人間の営みは否応なしに繰り返されていく。
    人々が希望を持ち続ければ、滅びたものも必ずまた再生する。
    これは人生賛歌なんだろうけど、
    所詮人は一人なんだなぁーと、
    陽気な音楽とは裏腹になぜか寂しい気持ちが残る。
    訃報
    訃報の感想・レビュー
    5ヶ月
    3.0

    このレビューはネタバレを含みます

    哀しかった。幸福な原初の記憶にとらわれた人間は、そこへ還っていくことでしか幸福になれないのか。仮に父がいなくなった後の自分の人生を彼が幸福にできたとしたら、あの音楽、虹色の色彩にあったのだろうけど、それも黒い鳥に破壊されてしまった。
    心を打つのは打つんだけど、視野が狭いというか、悲観的に、「閉じてしまっている」気はする。
    主人公が旅の中で出会った「他者」が、結局ぜんぶ自分自身だったのが問題だったんじゃないだろうか。
    本当の「他者」と関わり、家庭を持ったりできたなら、自分の幸福を手に入れられたんじゃないか。
    まあ、そうしたくてもできなかったんだろうけど。

    一定のパターンが繰り返されるところが多くて、それは資本主義社会のシステムを表している。人間もそれを動かす歯車として描かれている。
    システムに抑圧されている個人が息を吹き返すのが、虹色の音楽を奏でている時なのだろう。

    たぶん、ブラジルにおいては過酷な労働や国家による弾圧が本物の苦しみなのだろうけど、現代日本に暮らす身としては、数世代前のテーマを見ているように感じた。
    システムと個人の軋轢については、昔から村上春樹が書いているし。
    自然破壊を批判するようなカットも、創り手は本当に問題だと思ってるんだろうけど、安直だなと。

    ただ、特に後半、言語化できない良いところがあって、それはアニメーションならではの良さなので、良かった。
    ちりめんじゃこ
    ちりめんじゃこの感想・レビュー
    6ヶ月
    3.3

    このレビューはネタバレを含みます

    ブラジルのアニメーション
    数々の賞も受賞されてるとのことで、気になってたのをやっと見に行けた!

    音と鮮やかな色彩、不思議な世界の調和が素晴らしかったな
    当たり前なんだけど、日本とはまったく違った感性で描かれてることがビシバシ伝わってきた





    ※ネタバレ感想

    男の子の人生を最初から辿ってると思っていたら、最後から遡ってたの本当びっくりした!!!

    帽子、写真、鮮やかな布……最後にパタパタと繋がってうわーっとなった
    そ、そこまでちょっと退屈してたのは否定できないけど…!

    でもね、子供が自転車でお父さんを追いかけるシーンなんか一生懸命で辛くて……
    息を切らしながら最後坂を登って駅まで着いたのに降りてきた人は誰が誰だかわからない……お父さんだ!って思ったらクローンみたいにわいて出てくるシーン怖くなかったですか…?
    その恐怖と虚無感ときたら…あのときは男の子の心情がはっきり理解できたような気がした


    絵的には、どこを切り取っても綺麗で完成されてた
    単純に色使いという点でもデザイン性が高くて、ストーリー絡めて動かしながらこれを保ってるのすごいな~
    戦争の兵器が、ゾウなどの動物デザインに仕上げてるのなんてお見事だね


    お話は、馴染みにくかったかも
    いくら主人公の匿名性高めても、これを自分に重ねることは難しかったしやっぱり話にある程度の緩急はほしいなって思った
    現実は平凡でも、これはお話だから

    まあそういうのは他の作品がやってくれてるし、この映画に求めることではないか


    パンフレットがポストカードの形になってて、かわいいのでおすすめ!
    さんぴん茶
    さんぴん茶の感想・レビュー
    7ヶ月
    4.0

    このレビューはネタバレを含みます

    鮮やかな色彩とリズムの良い音楽に引き込まれた。反面、始終どこか切ない気持ちになる不思議な映画。
    見終わった直後は、この映画をどう捉えて良いか迷った。社会風刺や教訓がメイン?それとも少年の内面がメイン?…正直、未だに意味がよくわからない表現もある。
    またラストもハッピーなのかバッドなのかわからない。どっちにも捉えられるような気がしてくる。
    でもだんだんと、あまり考えずに感じるだけで良い映画なのかもしれない、とも思い始めた。漠然と、人生の心象風景を表した映画なのかも、とも思ったり。起承転結があってドキドキハラハラする映画ではない。でも曖昧だからこその面白さがあったし、じんわりと心に残った。
    あと関係ないけど、なぜかキャラの顔がニャッキっぽいのは気になった。同時に親近感も湧いたけど
    暁斎
    暁斎の感想・レビュー
    7ヶ月
    4.2

    このレビューはネタバレを含みます

    少年がお父さんを探しに行くお話。

    出稼ぎ労働者、大量生産制、貧困、失業などの社会問題をうつし出しながら、子どもが夢を見る存在として守られてる部分も描いてた。セリフないのに。

    お父さんがいなくなったときの大きすぎる喪失感の演出も、いい。
    鈴カステラ
    鈴カステラの感想・レビュー
    8ヶ月
    4.2

    このレビューはネタバレを含みます

    忘れていた、、、でも多くの人が感じたことのある気持ちを思い出させるそんな作品に思いました。

    ざっくり言うと、出稼ぎに出てしまった父を探しに少年が旅に出る話。
    前編セリフなしアニメーション!
    より感情表現豊かなピクミンとでも思っていただければ(?)イメージしやすいかと思います(笑)

    最初に良いと思ったのが絵柄の優しさと懐かしさ。
    CGを織り交ぜるとか現代のアニメーションが進歩してる中、あえてクレヨンや水彩で勝負しているところにまずやられました。ところどころで「これ"プロの幼稚園児"(良い意味で)雇って描かせてません?」な絵のタッチが見られたり、切り絵を使って(後半は特に)まどマギみたいな描かれ方してたのが面白く、別ベクトルのアニメの進歩を感じました。

    世界のどんな事でも興味を持つ、少年・少女時代ってそんな感じですよね?
    ルンルンストーリーを予想してたんですが、実際は結構重いというか、後半は特にそんな印象を受けました。

    少年は今まで自分がいた"子供の狭い世界"から、"大人達の社会"に出ていって社会の変化や現実を目の当たりにします。
    社会に触れるそんな少年を通して僕は、だんだん夢が見れなくなって現実を考え始めた感覚を思い出しました。
    また、環境破壊、戦争、失業する人々など暮らしは昔より豊かに便利になっているけれど、そういうことも忘れちゃいけない、目を向けないとねっていうメッセージも感じました。(絵とのギャップで個人的にはかなりずっしりに感じました)

    Q.そんなぁそしたらこの映画は暗いだけなの?
    工エエェェ(´д`)ェェエエ工
    A.いえいえ。
    そんな中でも楽しいことはあるっていうのもこの映画には込められています。

    じいさんに感じるせつなさとは別に、
    ラストカットで感じる切なさは
    ラストカットが"走馬灯の1番平和で幸せだった時の切り抜き"みたいに思えたからなのか、ああいった形で親のぬくもりを感じたり、あの頃の感覚はもうないっていう寂しさ、喪失感?なのか‥‥ 両方なのか?(笑)

    まさに大人の絵本!!
    (この単語、ある方の書かれてたレビューの中で、めちゃくちゃバチッと自分の中でハマったので使わせてもらいました。)
    重たいメッセージ云々はさておき、子供の頃の感覚や記憶を思い出させるだけでもこの映画は観てよかったなぁと思いました。
    ぴのした
    ぴのしたの感想・レビュー
    8ヶ月
    4.2

    このレビューはネタバレを含みます

    「子供がいろんな世界を見て成長し、お父さんと再会するとハートフルストーリー」かと思ったら全然そんなことなかった、、悲しい、悲しいお話

    最初は素敵なアニメーションと音楽で、明るい作品なのかと思ったけど最後になっていくにつれて社会問題批判が強くなって悲しくなっていく。ほんとは父を探しにも行ってないってことなのかな?それかすぐ戻ってきたのか。主人公が都会に出たあとの人生を時間軸を逆から辿っていくという構成も(これも最後にわかる)かなり秀逸でいい。一見子供の脈絡のない旅に見せて、その実、綿の製造〜加工〜運輸〜販売までのラインを追う形になっていて、その中で労働問題、環境問題、格差問題、政治問題など南米の抱える社会問題をこれでもかと見せつけてくる構成もうまい。

    サントラほしい
    aaron
    aaronの感想・レビュー
    9ヶ月
    3.6

    このレビューはネタバレを含みます

    キラキラ夢心地ムービーかと思ってたら、がっつり資本主義社会批判(ブラジルの視点から。日本は空中都市w)で不意打ち。画一化と没個性・格差社会と価値観の強要・物質主義、効率至上主義による人間性軽視、環境問題。普通なら押しつけがましいほどの政治的意図を含んだ、あからさまにシリアスな展開も、美しくて創造性溢れる画法なので行けると思いました的な…ちゃっかり描ききったはいいものの、うっ、かえって悲劇が際立つ!説得力!という、絵本パターン。「戦場のワルツ」とそっくりの、アニメ→実写製法の衝撃もあり。しっかりアシッドで、メリハリ効かせて攻撃してくるので途中からがんがん引き込まれる。
    豆もやしじん
    豆もやしじんの感想・レビュー
    10ヶ月
    3.4

    このレビューはネタバレを含みます

    すごく好きな色彩の映画だった。
    とくにマリンブルーとターコイズを使った空の色が好き。
    あと、父親を連れて行った電車が蟒蛇のように描写されていたのが印象的。

    台詞なしでも話はわかったけど、まさか機械化の影響で失業率があがり、貧富の差が広がっていくことへの問題提起をする内容だとは思っておらず、少年が旅の中で少年が成長していくといった内容を期待していた僕は肩すかしを食らった気分に。

    帽子ひとつで物語を線から円に変えたラストは秀逸。ただ、この仕掛けが物語を悲劇にしてしまったことが切ない。
    OASIS
    OASISの感想・レビュー
    10ヶ月
    4.1

    このレビューはネタバレを含みます

    家族を残し、出稼ぎの為に都会へと旅立って行った父親を探して冒険を繰り広げる少年の話。
    ブラジルのインディペンデントアニメ監督、アレ・アブレウによる長編アニメーション作品。

    ミクロからマクロへ。
    少年が覗き込む万華鏡の様に、世界は目紛るしく変化する。
    シンプルなデザインはどこまでも二次元的だが、前へ後ろへそして縦横無尽に画面狭しと躍動するキャラクターやストーリーは立体的。
    シンプルであるがゆえにギミックは映え、無機質で画一的な世界の薄気味悪さが引き立っていた。

    いつもと変わらず元気いっぱいに遊んでいた少年は、ある日、父が母と何やら神妙な面持ちで話をしている場面を目撃し、父が仕事を探して街に出ると知らされる。
    寂しさに耐えられなくなった少年は、身の丈ほどのトランクケースを担ぎながら、行方も知らぬ父を探して旅に出る。
    まずはオープニングの美しさ。
    顕微鏡で覗いたかのような、幾重にも重なり合った微粒子がズームアウトによって一つの物を形作る。
    「アントマン」が見た量子の世界のような繊細さと壮大さを感じる映像に引き込まれた。
    それと同時に、父親が居なくなる瞬間の霧のように消えて行く描写が何とも寂しい。

    好奇心旺盛な少年が遊び回る世界は広大でカラフル。
    画面の手前に近寄ってはバケツを蹴り、奥に遠のいては生い茂る草木を跳ね回る。
    画面の奥行きを感じられる構図が面白くて、平面的でへのへのもへじのようなデザインのキャラクターではあるが、動きは小動物的に愛らしくて見ているだけで和む。
    パタパタと駆ける足音、バケツを蹴り上げガンガンと叩く音、そして父親の吹く笛の音色。
    リアルな生活音がキャラクターや背景を彩り、身近に感じられた。

    少年が旅立った先では、綿畑でおっかない支配人にこき使われる人々や、同じ格好で同じ仕事を無味乾燥にこなす都会人などの冒険とは名ばかりの光景が拡がっていた。
    まるで奴隷制度の残る土地が拡大・発展によって一大国家を築きあげていくような過程を見ている感覚で、ブラジルという国の繁栄の裏にある貧困をそのままアニメーションの世界で描いたと思われる。
    その絵柄の可愛らしさからすると似つかわしくないほど突き付けられる問題は現実的で、映画の一部では森林伐採や大気汚染等の問題についての実際の映像が流される所もあるが、不思議とそれは当たり前のようた感覚で処理され、寧ろポップなタッチで機会的に描くからこそ狂気度が増しているように感じた。
    実際の映像が挿入される事でかえって説教臭くなってしまっているかなと感じる部分もある。

    少年が出会ったカラフルな衣装の明るい音楽隊と、黒でガチガチに統一された政府の暗い音楽隊との対照的なバトルも意味深くて面白かった。
    音が色のついた音玉になって浮かび上がり不死鳥の形を描くという煌びやかな美しさと、それを覆い尽くさんとするほどドス黒いカラスの戦いは、音玉やその集合体、それを操る人々が何を表しているのかと考えたりすると暗い部分しか見えなくなってしまうが。
    ファンタジーの世界での戦いと思いたいが、そうは思わせたくないような妙に現実的な部分であったり世相の反映といった要素を多分に含んでいる。

    子が父の背中を追いかけ、そして子もまた父になって行く。
    そんな円を描くような構造は、変わり行く世界の中で変わらない親と子の関係といったテーマをより鮮明に浮かび上がらせる。
    ミクロからマクロへ、そしてまたミクロへと。
    千々に乱れる鮮やかな色彩に寂寞の思いが滲む傑作であった。
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