父を探して(2013年製作の映画)

O Menino e o Mundo/The Boy and the World

上映日:2016年03月19日

製作国:
  • ブラジル
  • / 上映時間:80分
    監督
    アレ・アブレル
    脚本
    アレ・アブレル

    「父を探して」に投稿された感想・レビュー

    aya
    ayaの感想・レビュー
    2017/02/02
    4.9

    このレビューはネタバレを含みます

    すごい映画だった。すごいすごい!頭の中の世界観が脳内を飛び出してワーって広がっていく感じが好きだからすごく好みだった。どの部分を重要視するかによって評価に高低差が出るようにも思うけど、そもそも出稼ぎというワードがあらすじにある時点でまあ普通のアニメじゃない。でも子供向けじゃないかと言えば決してそうじゃない。幼児ならこの無限ループ的幾何学イラストやそれにマッチングしたラテン音楽でなんかしら楽しめると思うし、小学校の中学年くらいにもなればブラジルの社会問題をなんとなく読み取って、もしくはラストで明かされる主人公の少年の秘密を謎解くことができ、ただの綿花フワフワな映画ではないのだと好奇心を掻き立てる映画になり得てると思う。
    大人であれば出稼ぎというワードから想像できるテーマのシリアスさと、ジャケから読み取れる映像美の世界観の対比みたいなのが見せどこなのかと予想してしまうし、どのへん切り取ってもわたしとしてはすごい映画だなぁと感じる。
    しかしそんな一般論などどうでも良くて、この映画の絵の情報量というか絵だけで語りかけてくる量とパワーがすごくて、基幹はしっかりとブラジルの社会問題がベースにあるのに、ポジティブイメージのあるイラストとラテン音楽を使ってその陰陽戦争みたいなのに勝利させてる手法がすごいというか。ありがちかどうかはよう知らんが、消費社会や資本主義の象徴に対しては本物の人間の写真を少し悪意あるバランスでコラージュしたものを使って人物を描き分けてて、カレルゼマンを思い出した。幾何学模様って無機質なイメージだけどそこに思想を混ぜたらものすごい力が働くんだなって。
    少年の着地点も、私の解釈では老人になった彼の回顧から始まったのではなく、この社会問題を解決しない限り少年はあの青年のような人生を歩み、今のこの境地の老人に至りますよという警告だと感じた。ただそうなってしまったとしても、老人が木の向こうに見ている景色は本物で、彼の記憶の中にある少年時代のユートピアはどうやっても誰にも侵せないですよ、と。そう言ってるような気がした。
    えーこ
    えーこの感想・レビュー
    2017/01/19
    4.1

    このレビューはネタバレを含みます

    無限に広がる万華鏡のように、
    模様がどんどん広がっていくオープニングに吸い込まれそうになる。
    原題?は『少年と世界』
    世界は驚きに満ちている。

    セリフはなく、絵と音楽だけで綴られるこの物語は、まるで絵本の世界がそのまま動き出したみたいで、どこまでも続くカラフルな色彩に目を奪われる。
    乗り物は動物のように擬人化?され、
    奏でる音楽はシャボンのように形になって舞い上がる。
    でも旅する少年が目にするものは、
    格差社会、失業問題、森林伐採、環境汚染、独裁政権…
    クレヨン、色鉛筆、油絵具、コラージュなんかで描かれた可愛らしい画で社会を風刺する。

    あー、そーゆーことかぁ。。
    少年は大人になり、社会に出て、働いて、
    年老いて、故郷に戻り、過去を懐かしむ。
    人間の営みは否応なしに繰り返されていく。
    人々が希望を持ち続ければ、滅びたものも必ずまた再生する。
    これは人生賛歌なんだろうけど、
    所詮人は一人なんだなぁーと、
    陽気な音楽とは裏腹になぜか寂しい気持ちが残る。
    訃報
    訃報の感想・レビュー
    2016/08/28
    3.0

    このレビューはネタバレを含みます

    哀しかった。幸福な原初の記憶にとらわれた人間は、そこへ還っていくことでしか幸福になれないのか。仮に父がいなくなった後の自分の人生を彼が幸福にできたとしたら、あの音楽、虹色の色彩にあったのだろうけど、それも黒い鳥に破壊されてしまった。
    心を打つのは打つんだけど、視野が狭いというか、悲観的に、「閉じてしまっている」気はする。
    主人公が旅の中で出会った「他者」が、結局ぜんぶ自分自身だったのが問題だったんじゃないだろうか。
    本当の「他者」と関わり、家庭を持ったりできたなら、自分の幸福を手に入れられたんじゃないか。
    まあ、そうしたくてもできなかったんだろうけど。

    一定のパターンが繰り返されるところが多くて、それは資本主義社会のシステムを表している。人間もそれを動かす歯車として描かれている。
    システムに抑圧されている個人が息を吹き返すのが、虹色の音楽を奏でている時なのだろう。

    たぶん、ブラジルにおいては過酷な労働や国家による弾圧が本物の苦しみなのだろうけど、現代日本に暮らす身としては、数世代前のテーマを見ているように感じた。
    システムと個人の軋轢については、昔から村上春樹が書いているし。
    自然破壊を批判するようなカットも、創り手は本当に問題だと思ってるんだろうけど、安直だなと。

    ただ、特に後半、言語化できない良いところがあって、それはアニメーションならではの良さなので、良かった。
    ちりめんじゃこ
    ちりめんじゃこの感想・レビュー
    2016/08/07
    3.3

    このレビューはネタバレを含みます

    ブラジルのアニメーション
    数々の賞も受賞されてるとのことで、気になってたのをやっと見に行けた!

    音と鮮やかな色彩、不思議な世界の調和が素晴らしかったな
    当たり前なんだけど、日本とはまったく違った感性で描かれてることがビシバシ伝わってきた





    ※ネタバレ感想

    男の子の人生を最初から辿ってると思っていたら、最後から遡ってたの本当びっくりした!!!

    帽子、写真、鮮やかな布……最後にパタパタと繋がってうわーっとなった
    そ、そこまでちょっと退屈してたのは否定できないけど…!

    でもね、子供が自転車でお父さんを追いかけるシーンなんか一生懸命で辛くて……
    息を切らしながら最後坂を登って駅まで着いたのに降りてきた人は誰が誰だかわからない……お父さんだ!って思ったらクローンみたいにわいて出てくるシーン怖くなかったですか…?
    その恐怖と虚無感ときたら…あのときは男の子の心情がはっきり理解できたような気がした


    絵的には、どこを切り取っても綺麗で完成されてた
    単純に色使いという点でもデザイン性が高くて、ストーリー絡めて動かしながらこれを保ってるのすごいな~
    戦争の兵器が、ゾウなどの動物デザインに仕上げてるのなんてお見事だね


    お話は、馴染みにくかったかも
    いくら主人公の匿名性高めても、これを自分に重ねることは難しかったしやっぱり話にある程度の緩急はほしいなって思った
    現実は平凡でも、これはお話だから

    まあそういうのは他の作品がやってくれてるし、この映画に求めることではないか


    パンフレットがポストカードの形になってて、かわいいのでおすすめ!
    さんぴん茶
    さんぴん茶の感想・レビュー
    2016/07/05
    4.0

    このレビューはネタバレを含みます

    鮮やかな色彩とリズムの良い音楽に引き込まれた。反面、始終どこか切ない気持ちになる不思議な映画。
    見終わった直後は、この映画をどう捉えて良いか迷った。社会風刺や教訓がメイン?それとも少年の内面がメイン?…正直、未だに意味がよくわからない表現もある。
    またラストもハッピーなのかバッドなのかわからない。どっちにも捉えられるような気がしてくる。
    でもだんだんと、あまり考えずに感じるだけで良い映画なのかもしれない、とも思い始めた。漠然と、人生の心象風景を表した映画なのかも、とも思ったり。起承転結があってドキドキハラハラする映画ではない。でも曖昧だからこその面白さがあったし、じんわりと心に残った。
    あと関係ないけど、なぜかキャラの顔がニャッキっぽいのは気になった。同時に親近感も湧いたけど
    暁斎
    暁斎の感想・レビュー
    2016/06/23
    4.2

    このレビューはネタバレを含みます

    少年がお父さんを探しに行くお話。

    出稼ぎ労働者、大量生産制、貧困、失業などの社会問題をうつし出しながら、子どもが夢を見る存在として守られてる部分も描いてた。セリフないのに。

    お父さんがいなくなったときの大きすぎる喪失感の演出も、いい。
    鈴カステラ
    鈴カステラの感想・レビュー
    2016/05/30
    4.2

    このレビューはネタバレを含みます

    忘れていた、、、でも多くの人が感じたことのある気持ちを思い出させるそんな作品に思いました。

    ざっくり言うと、出稼ぎに出てしまった父を探しに少年が旅に出る話。
    前編セリフなしアニメーション!
    より感情表現豊かなピクミンとでも思っていただければ(?)イメージしやすいかと思います(笑)

    最初に良いと思ったのが絵柄の優しさと懐かしさ。
    CGを織り交ぜるとか現代のアニメーションが進歩してる中、あえてクレヨンや水彩で勝負しているところにまずやられました。ところどころで「これ"プロの幼稚園児"(良い意味で)雇って描かせてません?」な絵のタッチが見られたり、切り絵を使って(後半は特に)まどマギみたいな描かれ方してたのが面白く、別ベクトルのアニメの進歩を感じました。

    世界のどんな事でも興味を持つ、少年・少女時代ってそんな感じですよね?
    ルンルンストーリーを予想してたんですが、実際は結構重いというか、後半は特にそんな印象を受けました。

    少年は今まで自分がいた"子供の狭い世界"から、"大人達の社会"に出ていって社会の変化や現実を目の当たりにします。
    社会に触れるそんな少年を通して僕は、だんだん夢が見れなくなって現実を考え始めた感覚を思い出しました。
    また、環境破壊、戦争、失業する人々など暮らしは昔より豊かに便利になっているけれど、そういうことも忘れちゃいけない、目を向けないとねっていうメッセージも感じました。(絵とのギャップで個人的にはかなりずっしりに感じました)

    Q.そんなぁそしたらこの映画は暗いだけなの?
    工エエェェ(´д`)ェェエエ工
    A.いえいえ。
    そんな中でも楽しいことはあるっていうのもこの映画には込められています。

    じいさんに感じるせつなさとは別に、
    ラストカットで感じる切なさは
    ラストカットが"走馬灯の1番平和で幸せだった時の切り抜き"みたいに思えたからなのか、ああいった形で親のぬくもりを感じたり、あの頃の感覚はもうないっていう寂しさ、喪失感?なのか‥‥ 両方なのか?(笑)

    まさに大人の絵本!!
    (この単語、ある方の書かれてたレビューの中で、めちゃくちゃバチッと自分の中でハマったので使わせてもらいました。)
    重たいメッセージ云々はさておき、子供の頃の感覚や記憶を思い出させるだけでもこの映画は観てよかったなぁと思いました。
    ぴのした
    ぴのしたの感想・レビュー
    2016/05/17
    4.2

    このレビューはネタバレを含みます

    「子供がいろんな世界を見て成長し、お父さんと再会するとハートフルストーリー」かと思ったら全然そんなことなかった、、悲しい、悲しいお話

    最初は素敵なアニメーションと音楽で、明るい作品なのかと思ったけど最後になっていくにつれて社会問題批判が強くなって悲しくなっていく。ほんとは父を探しにも行ってないってことなのかな?それかすぐ戻ってきたのか。主人公が都会に出たあとの人生を時間軸を逆から辿っていくという構成も(これも最後にわかる)かなり秀逸でいい。一見子供の脈絡のない旅に見せて、その実、綿の製造〜加工〜運輸〜販売までのラインを追う形になっていて、その中で労働問題、環境問題、格差問題、政治問題など南米の抱える社会問題をこれでもかと見せつけてくる構成もうまい。

    サントラほしい
    aaron
    aaronの感想・レビュー
    2016/04/19
    3.6

    このレビューはネタバレを含みます

    キラキラ夢心地ムービーかと思ってたら、がっつり資本主義社会批判(ブラジルの視点から。日本は空中都市w)で不意打ち。画一化と没個性・格差社会と価値観の強要・物質主義、効率至上主義による人間性軽視、環境問題。普通なら押しつけがましいほどの政治的意図を含んだ、あからさまにシリアスな展開も、美しくて創造性溢れる画法なので行けると思いました的な…ちゃっかり描ききったはいいものの、うっ、かえって悲劇が際立つ!説得力!という、絵本パターン。「戦場のワルツ」とそっくりの、アニメ→実写製法の衝撃もあり。しっかりアシッドで、メリハリ効かせて攻撃してくるので途中からがんがん引き込まれる。
    豆もやしじん
    豆もやしじんの感想・レビュー
    2016/04/09
    3.4

    このレビューはネタバレを含みます

    すごく好きな色彩の映画だった。
    とくにマリンブルーとターコイズを使った空の色が好き。
    あと、父親を連れて行った電車が蟒蛇のように描写されていたのが印象的。

    台詞なしでも話はわかったけど、まさか機械化の影響で失業率があがり、貧富の差が広がっていくことへの問題提起をする内容だとは思っておらず、少年が旅の中で少年が成長していくといった内容を期待していた僕は肩すかしを食らった気分に。

    帽子ひとつで物語を線から円に変えたラストは秀逸。ただ、この仕掛けが物語を悲劇にしてしまったことが切ない。
    >|