「悲しい」の一言に尽きる。
「私のことを知れば知るほど音楽を取ったら何もない人間だとわかるわ だからそっとしておいてほしいの 音楽をやる時間が必要なの」「スターになりたいんじゃないの 音楽が好きなだけ」
稀代の天才ジャズシンガーはなぜ27歳の若さで命を捨てたのか?ホームビデオで繋ぐエイミー・ワインハウスのドキュメンタリーです。
どの音楽関係者も口を揃えて「体は若いが、歌は老練で成熟していた」と語っている。
「実体験じゃないと歌にできない」
エイミーの歌の裏には生々しいプライベートがある。声にも歌詞にも曲にも説得力があるのはとても皮肉だ。(でも本当にそうかな?この人ならどんな状況でも良い歌かけたんじゃないかな?)
才能は莫大なお金を生んで、エイミーはお金を生む金の鶏だった。恋人、父親、レコード会社…みんなに才能が利用されていく。鶏の彼女はどんどん痩せ細っていく姿は見るに堪えない。
酒とドラッグを逃げ場にしてさらにはまっていく。何度か引き返せるポイントがあったのに、恋人や家族は歌うことをやめさせないし、エイミーも彼らに心酔していた。
rehab も back to black もそうした実体験を背景にしている。(rehabってすごく明るい曲だと思ってたのに…)
「二つの愛に殺される。恋人とドラッグ」
「グラミー賞を受賞しても、ドラッグがないなら虚しいだけよ」
このシーンはとても悲しい。エイミー自身の中で音楽も友達もどうでもよくなっていくからだ。
ブレイクみたいなクソ野郎じゃなくて、エイミーのことを本当に考えられるポッチャリのニックにしときゃよかったんだよ!と思う。
自分が歌うから状況がどんどん悪くなる。
だからグラミー賞の後のベオグラードのライブでステージ上でエイミーはストライキした。痩せ細った体でたった一人で戦っていたんだ。
トニーベネットは「ジャズシンガーは5万人の前では歌いたくないものさ 彼女は本物のジャズシンガーだよ」と言う。エイミーは小さな小屋で少ない人のために歌いたいんだ。
とことん搾り取られて、歌いたくなくても歌う事を強制されて、どっちに行ってもゴシップは彼女を悪く書く。テレビで変人のように扱われる。
あと僕が思うにニックの結婚って意外とダメージデカかったんじゃないかとも思う。
友達に「私たち前みたいにやり直せるかな?」「もちろんよ」と電話した数日後、27歳で亡くなってしまった。
この映画を見ると、なぜ命を絶ったか?ではなく誰がエイミーを殺したのかがわかる。金と酒とドラッグとマスコミと家族と、そして彼女自身と歌そのものだ。でもそこに見ている自分自身も加わると思うと恐ろしい。
エンディングは Valerie がかかります。
めちゃ悲しい曲です。