ノラネコの呑んで観るシネマ

AMY エイミーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

AMY エイミー(2015年製作の映画)
4.7
一度聞いたら忘れられない、独特の歌声の持ち主だったジャズ・シンガー、エイミー・ワインハウスのデビューから死までの軌跡。
凄く悲しいんだけど、その悲しみが心地よさを呼ぶというか、まるでこの映画自体が素晴らしいジャズの様。
アシフ・カパディアは作中のエイミーと共鳴して、映画というジャズを奏でているのだ。
ただ歌いたかっただけなのに、ただ愛されたかっただけなのに、彼女はあまりに才能があり過ぎたために、周りに祭り上げられてしまった。
クスリで彼女を繋ぎとめる最低のクズ夫、虚栄心から愛娘を金づるにしてしまうパパ、彼女をスケジュール通りに歌わせることにしか興味のないマネージャー。
エイミーは「音楽」に生き、「音楽業界」に殺された。
彼女を助けようとした友達たちの願いが届かなかったのが、今となっては残念だ。
映画は淡々とエイミーの10年間を辿るが、人生に関する多くの示唆に富む。
作中の彼女のパフォーマンスは、改めて見ても圧巻で、これはやはり周りがほっとかなかっただろう。
だが、幾つもあった人生の分岐点で、彼女が別の選択をしていたら。
ラストのトニー・ベネットの言葉が、深く心に残る。
これはオスカーも納得の名品だ。

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