カメラも音楽ももちろんキャストも踊る奇跡のオープニングシーンで、セブ(ライアン・ゴズリング)とミア(エマ・ストーン)は出会い、それぞれ異なる夢に向かう二人は恋に落ちる・・・
1950年代を思わせるボーイ・ミーツ・ガールのストーリー。
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースを思わせるダンスシーン。ジェームス・ディーンの『理由なき反抗』で有名なグリフィス天文台。壁に貼られている、イングリット・バーグマンのポスター、まるで『雨に唄えば』でジーン・ケリーがずぶぬれになりながらしがみつき踊ったシーンを連想させる電柱、憧れのワーナーブラザース・スタジオと、どれだけ映画ファンを喜ばせてくれるんだっていう演出に、心から酔わされてしまう。
監督のデイミアン・チャゼルは現在38歳。
物語が大きく転換するシーンに流れる、A-haの『Take on Me』などは、彼が生まれたころの曲じゃないのか!
クラシックをただ古いものとして扱わず、新しい物語に「古き良さ」の味付けをする演出に脱帽。
売れないジャズピアニストとオーディションに落ち続けている女優。
二人はお互いの夢を応援する。
が、世間の評価は厳しい。
食っていくためにとてもこだわっていた自身の音楽哲学を曲げていくセブに向けるミアの悲しげな表情。
そのミアも、自身で作った意欲作の一人舞台で観客の酷評に遭い、夢をあきらめようとする。
『理由なき反抗』を上映していた映画館の閉館が、主人公たちの心情を表す。
すれ違いながら生きてきた二人がパラレルワールドの中で戻っていく5年間のホーム・ムービーがたまらなく切ない。
悲しいけれど力強さを感じるラストの二人の笑顔。
セットでは雰囲気が出ないとオールロケにこだわった監督の心意気もよし。
どのカットもすべて優れた絵画になるんじゃないかというほどカメラも見事。
映画の中に映画が登場する作品は傑作であるという私の持論が証明された作品でもあります。
主演の二人もとてもいい。
私はこんなクラシカルでロマンティックな夢物語が大好きです。