きみどり

ラ・ラ・ランドのきみどりのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
1.5
2015年のマイ・トホホ映画だった『セッション』よりはマシなはず…なんといっても目に入れても痛くないほど大好きなエマ・ストーンとライアンゴズリングなんだもの!
…甘かった。
トホホを超えてゲッソリゲンナリ。2時間たっぷりチャゼルの自己愛にお付き合いさせられた気分です。
わたしはホントーーーーーーに彼の作品が嫌いなのだと痛感しました。ぜぇぜぇ。

もちろんオープニングの群舞は文句なしに素晴らしくて、あの数分だけは胸が熱くなりました。
と、思ったら、デカくて派手な正四尺玉を最初にもってきた花火大会みたいな映画だった。オープニングは目眩しでしたよ。

物語はシンプルかつ王道。
であればこそ、いかに話を転がすかに成否はかかってくるのですが、このたびはっきり分かったけれど、チャゼルは「ストーリーテリング」が致命的に下手くそなんだわ。
ミュージカルシーンの合間の、お話を進める下地部分がやたらダレる上にセリフが陳腐過ぎです。え、それいちいち説明する? しかもまた言う? がいっぱい。
2015年の『マッドマックス』、2016年の『ルーム』とで、言葉を使わず画面の作り込みで状況を200%理解させられてしまうという経験をしてしまった後だけに、もう本当に残念だし、イライラしっぱなしでした。

とはいえエマ・ストーンと彼女のファッションは可愛かった! あれだけ何着せても似合う女優さんはなかなかいないと思います。彼女のキュートネスで映画が辛うじて救われていた。
ライアン・ゴズリングは、これはもうわたしの好みの問題ですが、なんか精彩を欠いていた印象です。こんなに目と目の間が狭かったっけ? こんなヘナヘナした声だったっけ? と欠点(いつもならそれが魅力的なのに)ばかり目に付いてしまった。チャゼルと相性悪いと思うので、もう二度と出ないで欲しいです。あんな姿、見たくなかったわ…。

ところで、全米サンバ協会なんてのがあるなら、ぜひアンチ・チャゼルを表明して欲しいところの、例の「ジャズは良くてサンバはダメ」問題について。
あれは…、あれはもしや、チャゼル渾身のウディ・アレン風コメディパートだったのかという疑いが頭をもたげてきました。
神経質な男性が偏向しまくった自身のこだわりを語って、冷笑されたりうんざりされたりするのって、ウディ・アレン作品では必ず出てくるけど、まさかあれを真似したのかしら?(だとしたら、ゴズリングにはそれに相応しい軽さが決定的に不足している)。
そういえばエマ・ストーンの近作もアレン作品だし。
何より、ウディ・アレンといえば、世界的に尊敬を集める巨匠であり、かつプライベートでは「ジャズ・クラリネット奏者」として舞台に立ち…。
きゃーーー(断末魔)チャゼルの最終的な野望が見えてしまったかもしれん。
アカデミー賞とって少しは野心ギラギラがおさまるかと思ったけど、彼の脳内野望すごろくはまだ続くのか。カンヌでパルムドールとか審査委員長とか…、月一でおハイソなジャズクラブで演奏とか…ああ目が回る。

わたし、この予想が当たったら、名前を「カサンドラ」に変えます。
あ、カサンドラはギリシャ神話に出てくる、悪い予言ばかりして人々に嫌われた挙句に惨殺される女性です。

そしてチャゼルはもう見ないことにします。
きみどり

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