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インクレディブル・ファミリーのmのレビュー・感想・評価

4.8
14年前に作られた前作のラストシーンからそのまま直結して今回の物語が始まるが、映画の中の価値観はしっかりと14年後の今に向けてアップデートされている事に驚いた。現在のディズニーらしい映画だと思う。

中年男性のミドルエイジ・クライシスを中心に描いた前作とは打って変わって、今作が描くのは主婦の社会復帰と大活躍、そして妻に代わって家庭に入った専業主夫の孤軍奮闘だった。妻のヒーロー活動と夫の家事・育児とが同等に極めて困難で、且つ尊い喜びに満ちたものとして描かれている事が素晴らしい!妻の大活躍に興奮して、夫の家事育児の苦心(そして妻への嫉妬の気持ち)に笑いつつほろりともする。
家父長制の終焉と新しい家族像が明るく古風な大活劇の中で理想的に描かれていて御見事。


アクション・シーンの数々は大活劇と呼ぶに相応しい濃厚さと迫力で、オープニングのシークエンスからもう満腹。クライマックスも手に汗握る仕上がりで大いに盛り上げる。『トム・クルーズみたい』という言葉が思い浮かぶバイク疾走シーン(最近のスタントのせいでトム・クルーズが自分の中でもう完全に一種の概念になっている)も唖然とする奇想が詰め込まれている。
「ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル」や「トゥモローランド」といった実写活劇映画でブラッド・バード監督が新たな経験を積んできた事が活きたようで、前作以上に荒唐無稽でツボを完璧に押さえた圧倒的な活劇が全編繰り広げられていて血湧き肉躍った。


ナード女子っぽい新ヒーローの特殊能力はまんま「X-MEN フューチャー&パスト」にいた人だが、アニメの長所を活かして見せ方はこちらの方が活き活きとしている。彼女のキャラクターも発展のさせ方も良い。
作品の節々にシスターフッドの芽が忍ばせてある事も好感を抱いた。


悪役の人物造形や動機も見事で、(この後はネタバレなのでコメント欄に書きます)
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