もこ

LION ライオン 25年目のただいまのもこのレビュー・感想・評価

3.8
オープニングは、優しい兄と無邪気な弟とのやり取りで癒される。お兄ちゃん大好きな弟と、そんな弟の面倒をよく見ている兄。一見穏やかだが、そんな二人のやり取りに和むシーンの中でも貧困がしっかり描かれていて、どこか落ち着かない気分になる。子供の笑顔の後ろをうろつく痩せこけた犬、騒々しい車の音、余裕のなさそうな人々の顔。そこにはボリウッド映画でみる何かすごい軽快なステップを踊りまくっているおっさんや輝かしい美女など存在せず、皆厳しい顔をして歩いている。その顔から、この国で生きていく事は過酷な事なのだと、ありありとわかる。
そんな国でサルーは逞しく生きていくが、ある日彼は迷子となり、そこから25年間家族と離れて生きていくことになる。

この映画の中には幾つか子供を性的に搾取しているようなシーンがいくつか見受けられ、そのシーンには本当に、心からぞっとして厭な気分になった。この映画にはたくさんの子供が出てくるが、サルー含めそこから幸せになることが出来た子供はほんの僅かなのだと思う。サルーがいくら幸せになってもどこか苦しそうなのは、そういった思いが胸を締めていたこともあるだろう。

再会のシーンはやっぱり泣いた。そしてその後のエンディングに向かうサルーの思い出とオープニングにも繋がる情景……ここら辺は本当に心打たれるというか、最後に明かされるある事柄と相まってとても切なく、美しかった。
もこ

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