黒田隆憲

LION ライオン 25年目のただいまの黒田隆憲のネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

ここ数年で一番泣きました。いやあ、『スラムドッグ$ミリオネア』のデーヴ・パテール、本当にいい役者になったなあ。

オーストラリアで何一つ不自由なく暮らす主人公サルーが、幼い頃に生き別れた本当の家族に会いに行く実話を基にした作品。観る前は、大人になってからのサルーを中心とした構成で、幼少期のエピソードは「フリ」くらいのバランスなのかと思いきや、1時間以上かけてしっかりと丁寧に描くことで、成人になったサルーがいかに過去と現実との間で引き裂かれながら、日々を生きているかが観る側にも伝わるようにしている(「ルーニー・マーラー、早く出てこないかな……」とか思いながら観ていてすみません)。

これが実話だということに驚かされ、ニコール・キッドマン演じるスー・ブライアリーが、2人の養子に注ぐ愛の深さに心打たれる。自分たちの子供を作らず、養子をもらうことにした理由はとても崇高だったが、そう思うようになったキッカケが「神の啓示」のようなエピソードだったんで若干引いちゃったんだけど(笑)、でもそのくらいの、ある意味「狂気」がなければ、こういう行動力に結びつかないのかも知れない……と、『ファースト・マン』におけるアームストロング船長の「狂気」のこととか思い出しながら観ていた。

あと、北朝鮮に拉致された人たちとその家族のことも考えずにはいられなかったな。

ちょっとした演出が巧い。同じインド系の同級生たちから、幼少期のことを尋ねられて困っているサルー。その微妙な空気を察したルーニー演じるルーシーが、すぐさま「クリケット好き?」と横槍を入れて話題を逸らすシーン。インド人はみんなクリケット大好きだから、あっという間に話題はクリケットに移り、サルーは難を逃れる。ほんの1分くらいのこのシーンで、ルーシーの人柄も、サルーが彼女に恋してしまう理由も分からせるのはすごいと思った。

エンディングのタイトルバックも鳥肌もの。音楽もとても良かったです。
黒田隆憲

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