TaiRa

知らない、ふたりのTaiRaのレビュー・感想・評価

知らない、ふたり(2016年製作の映画)
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繋がっている事を自覚していない人々の群像劇としては『サッドティー』より上手いかもしれない。移動が加味されてるからかも。

人を好きになる行為に孕まれるエゴイズムについて、それ自体の是非を判定しないのが今泉作品の良さかもしれない。一目惚れという超常現象をいい塩梅で突き放して描く風情。初めましてで一目惚れ、二度目ましてでラブレターというすっ飛ばし方が好きみたい。地味に時代設定が近過去か架空の現代なのが良い味出してる。ストリートビューがあったら成立しない話。岡惚れ恋愛群像劇ってジャンルはこれで完成したから次作以降のテイストになったのかな。自分のせいで半身不随になった人間を思って自ら幸せを遠ざける男が「恋をしました」というまでの話で、その合間に他者のことを考えられない恋愛頭脳の迷走者が右往左往する。恋をすると周りが見えなくなるという症状を尾行の連鎖にして見せる事、それを第三者の視点で見れば気味悪く見える事を映す。台詞に自然な口語を持ってくるので会話場面の尺が必然的に延びるのは課題かも。いい言葉で場を持たせる事は出来てるけど。プロポーズの会話は全体的に長いが良かった。役者の動きで良かったのは公園の場面で、人物二人が会話する奥で青柳文子がターザンロープでフレームを横断するとこかな。その後に韓英恵が韓国語で言葉叫びながら遊具登っていくのを青柳が「うにゃうにゃうにゃ〜」って適当に真似しながら後を追うところも好きだった。
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