MasaichiYaguchi

orangeのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

orange(2015年製作の映画)
3.5
あの時ああすれば良かった、または逆にしなければああはならなかったと後悔することがある。
「後悔先に立たず」と言うけれど、もしやり直すことが出来たらと思う人は多いと思う。
高野苺さんの漫画原作を、NHK連続テレビ小説「まれ」の土屋太鳳さんと山崎賢人さんが再共演で実写映画化した本作は、10年後の「未来」から当時起こった悔やんでも悔やみきれないことを何とかしようと「イマ」の自分に働き掛けようとするSF青春ラブストーリー。
「未来」と「イマ」を往き来して展開する本作では、タイムパラドックスやパラレルワールドが重要なモチーフになっている。
このSF的設定を借りて、「未来」からのメッセージを受けて、「イマ」を後悔しないよう勇気を振り絞って行動する土屋太鳳さん演じるヒロインの高宮菜穂の健気さ、切なさに思わず共感する。
複雑な家庭環境を抱え、東京から長野県松本市に引っ越してきた成瀬翔を、その多感で傷付き易い心情を山崎賢人さんが繊細に演じている。
そして竜星涼さんが演じる、恋と友情の狭間で揺れながら、菜穂と翔の為に心を砕く須和弘人の優しさが心に染みる。
この3人を含む仲良しのクラスメートの面々、山崎紘菜さんの茅野貴子、桜田通さんの萩田朔、清水くるみさんの村坂あずさ、夫々が個性を発揮して彼らの青春のハーモニーを奏でていく。
少女漫画の恋愛物にありがちなキャラクター設定のヒロインとその相手によるラブストーリーが中心になっているが、本作で胸を打つのは、最悪の事態を回避しようと結束する彼らの友情の熱さ、その絆の強さだと思う。
タイトルの「orange」が何を意味しているのかはラストで分かるが、その「orange」の優しさや温もりが心に広がります。