MasaichiYaguchi

ワイルド・スピード ICE BREAKのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

4.0
人の心は変わり易く、定まらないことを表す言葉で「昨日の友は今日の仇」というのがあるが、誰よりもファミリーを大切にしていたドミニクの裏切りを描くシリーズ第8作は、ファミリー崩壊と世界の危機を孕んでスリリングに展開する。
何故ドミニクがファミリーを裏切ったのかがキーポイントなのだが、このキーポイントを握るキーパーソンにして本作の最大の敵、サイバーテロリストのサイファーに、ドミニクをはじめとしてファミリーは翻弄され、絶体絶命のピンチに陥る。
ファミリーは敵の手に落ちたドミニクの奪還と敵の計画阻止という二つの高いハードルをクリアしなければならない為、彼らは思いも寄らない手段に出る。
それは「昨日の敵は今日の友」ではないが、かつての宿敵であるデッカード・ショウと手を組むという“呉越同舟”作戦。
かつて死闘を繰り広げた相手と手を組むとか、本作では“有り得ない”ことが魅力になっているような気がする。
道交法や刑法の枠組みを無視したり、今までのアクションの限界を超えたり、拳を交えたら友達というような世界観を持つこのシリーズは、ある意味“何でもあり”がファンを熱くさせていると思う。
キャストの方もレギュラーメンバーは勿論のこと、新たにサイファー役でシャーリーズ・セロンや謎の老婦人役でヘレン・ミレンというオスカー女優たちが参加していて花を添えている。
そして舞台もハバナ、ベルリン、ニューヨーク、ロシアとワールドワイドに展開して、今回もそこで度胆を抜くようなアクションを繰り広げていく。
このシリーズはド派手なカーアクションが売りだと思うが、ファンが長く支持しているのは、作品の柱としてファミリーの強い絆が描かれているからだと思う。
本作では奇しくもドミニクの裏切りによって、その絆が試されるような展開になっているが、更にそこに親子の情愛を織り交ぜて、作品に何とも言えない温もりを与えている。
ラストで、このファミリーに新たに加わった者の名がドミニクによって発せられるが、それを聞いて胸が熱くなるのは私だけではないと思う。