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弁護人のRingRingLoveのレビュー・感想・評価

弁護人(2013年製作の映画)
4.2
韓国の骨太社会派映画でソン・ガンホ主演と聞いて、おもしろくないわけがないと観に行った「弁護人」
そうなんですおもしろくないわけがなかった!
迫力ある法廷劇に心が震えました

国家保安法の名の下に、公安のアカ狩りによりみせしめのため不当に拘束・拷問を受けた学生たちの、実在の冤罪事件「釜林(プリム)事件」をモチーフとした今作
裁判を担当したのが弁護士時代の故ノ・ムヒョン元大統領で、韓国の法曹界では知らない人はいないほどの有名な人権裁判だそうですね(のちに知ったのですが、ムン・ジェイン現大統領も同じくこの事件の担当弁護士だったそうです)
軍事政権によるクーデターに抗議して民衆が蜂起した光州事件と、のちに韓国が民主化を勝ち取るきっかけとなる6月民主抗争の狭間期にあって、公安の理不尽な拷問に遭った学生たちの無罪を主張し奮起する主人公の姿が熱く描かれています

高卒と蔑まれながら釜山でもっとも金を稼ぐ金満弁護士になった主人公が、やがてはそれらを投げ打って人権派弁護士へと変貌していく展開もスムーズで、コミカルな前半部分があったからこそ後半の裁判シーンは切に胸に迫りました
物語のラスト、傍聴席の「弁護人」も史実だそうで、それだけでも落涙を禁じえません

実際の故ノ・ムヒョン元大統領も正義感が強く人権のために尽くした弁護士だったようで、だからこそ優秀な政治家とはなりえず無念の自死を遂げたのだとか…
権力の闇というのは深いですね

ソン・ガンホの社会派映画にハズレなし
ぜひ広く知られてほしい佳作映画でした

ところで、この作品を観て韓国の民主化運動をより詳しく知りたいと思ったかたは、上でも触れた光州事件を扱った「タクシー運転手 約束は海を越えて」と、6月民主抗争に至るまでを描いた「1987、ある闘いの真実」も観てみて欲しい
いずれも今作に負けず劣らず、国家権力へ挑む市井たちの命懸けの闘いを描いた傑作揃いです
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