ちよ

東京無国籍少女のちよのレビュー・感想・評価

東京無国籍少女(2015年製作の映画)
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戦後日本とあり得たかもしれないもう一つの東京が対置的に描かれる。現実を支配する観念としての幻想と、可能性という幻想。処女を喪失した主人公が幻想から覚醒するのではなくもう一つの幻想のなかで目を覚まし、どちらの世界でも若さに対するグロテスクな搾取は存在するという「天使のたまご」、「スカイ・クロラ」、「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」の3つを足して10ぐらいで割ったような内容。正直、上記の作品を既に視聴していたら別に本作をわざわざ観なくてもいいが、ラストのアクションは1時間程度の苦行を耐えた後のご褒美としては十分すぎるほど。無垢な、無国籍となった戦後日本の象徴としての女子高生と、それに対する消費・搾取としての耽美というモチーフ選びは正解。無垢で無国籍な世界から目覚めた先が別の幻想でしかなく、かつその幻想が民族主義的ナショナリズムではなく共産主義的革命闘争の夢だということも踏まえて考えると「それぞれの幻想を選んで生きるしかない」という一つのテーマは辛うじて浮かび上がってくる。
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