けーはち

ジーザス・クライスト・スーパースターのけーはちのレビュー・感想・評価

4.5
キリスト最後の七日間を描く、珠玉のロックオペラ。

★裏切りの使徒ユダ(カール・アンダーソン)とイエス・キリスト(テッド・ニーリー)、マグダラのマリア(イヴォンヌ・エリマン)の掛け合いを主に、彼らの人間臭い苦悩を全編歌曲に綴る野心作。なお、メインの三人は黒人、白人、アジア系とあえて人種を分けている。彼ら以外のキャストやエキストラも満遍なく色んな人種を取り混ぜている。

★舞台演劇の映画化だけど、冒頭と末尾には当世風(当時のヒッピー)な若者が舞台を組み立て、解体するカットをわざわざ入れ、また先に言った通りで人種はバラバラかつ聖書の各場面を現代の風俗・習慣で再解釈してディスコ・サウンドで踊りまくる、戦車や戦闘機が飛び交うなど、メタ+戯画化の視点をあえて盛り込んで、歴史劇でも現代劇でもない、まして聖書の忠実再現ではないことを打ち出した様子だ。とはいえ、真面目なキリスト教徒は、さぞお怒りだったようで……。

★誰よりキリストを愛していながら彼を見ていられず裏切りの手をかける13番目の使徒ユダはファンク・ソウル。キリストは気だるく韜晦したプログレ、サイケからハードな魂の叫び、超高音シャウトまでこなす。この二人のメインボーカルには華がある。そして、マグダラのマリアの癒し系スロー・バラードなパートも、しっとり聞かせてくれる。ユダヤの大司教の高低音域を分けた合唱パートなども印象的。そして誰でも一度は聴いたことがあるだろう、バックボーカルを豪勢に盛り込んだ「スーパースター」は滅茶苦茶盛り上がる。もちろん他のパートも、アンドリュー・ロイド・ウェバーの曲は全編冴え渡っている。当時のロック/ポップファンにはもちろん、滅茶苦茶ハマるし、そうでなくてもミュージカルが好きなら、間違いなくオススメだ。