けーはち

カッコーの巣の上でのけーはちのレビュー・感想・評価

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
3.5
アメリカン・ニューシネマと言えば、無軌道で反抗的な主人公が狂う/死ぬ/心が折れて絶望する等の結末で虚無感のある後味を与えてくるが、本作の結末はマクマーフィ(ジャック・ニコルソン)の印象的な顔芸でそれを完遂した上で、相棒のチーフ(巨漢のネイティブ・アメリカン)にバトンが渡る。ベトナム戦争で自らの正義に疑いが生じたアメリカ人の原罪意識を反映した結末だろう。ならず者が詐病で放り込まれた精神病院で厳格な管理に抗って無気力な患者たちと友情を育むという展開には感銘を受けるが、病院側の管理がいかにも徹底抗戦すべき理不尽極まる人権蹂躙かは正直微妙で(最終手段のロボトミー手術は別として)、脱出決行前夜にハメを外して寝坊する主人公のユルい行動も御都合でしかなく、反体制のアンチヒーローが圧制に反駁し自由を求めた傑作感動作として今の目では手放しで評価できるかはどうかな。