【1974年キネマ旬報外国映画ベストテン 第7位】
『月の輝く夜に』ノーマン・ジュイソンが同名大ヒットミュージカルを映画化した作品。アカデミー賞では作曲賞にノミネートされた。
小さい頃劇団四季でやっていたのを観た記憶がある。「ジーザス・クライスト・スーパースター」というテーマ曲はなんだか耳に残っていて懐かしい感じがした。映画的にも音楽的にもすごい実験的なことをやっているのに破綻していない。
ノーマン・ジュイソンの適度にドライな演出が舞台の砂漠と合っていてよかった。
本当に音楽はロックで、ギターサウンドやシャウトありのゴリゴリ。それでもあの有名なイエスの半生がしっかり描かれて見える。劇団四季で観たときも他のミュージカルと全然違って圧倒されたが、本作でもミュージカルのいいところが受け継がれている。
セリフがなく歌だけで進行していくのだが、やはりアンドリュー・ロイド・ウェバーはすごい。キャラクターに合った歌がそれぞれあてられているし、リプライズで違う人が歌うと全く異なる雰囲気になったりと上手い。
また、ユダの悲痛な心の叫び、マグダラのマリアの愛といった人間らしい描写にしているのもいい。弟子たちの中で一番キリストを理解していたのはユダとマグダラのマリア、この二人だったんじゃないか。
ユダが途中「もっと上手く立ち回っていればこんなことにならなかったのに」とボヤくのがウケた。それはマジでそう。
ピラトの裁きのシーンもすごくいい。ピラトは止めようとするのに群衆は死刑を求める。誰か個人を悪役にするのではない視線がいい。(まあヘロデ王は完全に悪役だが…)
ヘロデ王の成金感もすごいよかった。あんな解釈できるんだ。急にトロピカルなファッションと音楽が来て笑っちゃった。
劇団四季またこれやるなら行きたいな。映画としてもよく出来ているし、昔を思い出させてくれたという意味でもお気に入りの一本になった。