Shelby

たかが世界の終わりのShelbyのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
4.0
家族と関係を一切絶っており、作家として成功していたルイ。12年という長い月日から突然故郷を訪ねる。そこには自分の余命があと僅かであることを伝える真意があったのだが、という物語。

正直観ていて困惑する場面が幾つかある。例えばアントワーヌとシュザンヌの他愛もない会話からの啀み合い。むき出しの感情が何度も激しくぶつかり合う姿にこちらが置いてけぼりにされてしまう。
更に兄アントワーヌのルイに対する異常な当たりの強さ。何故そこまでして、弟が許せないのか理解に苦しんだ。

この映画、基本的には会話劇になるため状況を察するのが彼らが織り成す一つ一つの言葉から想像することしか出来ない。
ルイを呼び出し二人きりで話し始めた母の言葉にもあったが、アントワーヌは家族の中にたった一人の男である自分がしっかりしなければいけないという重圧に、長年苦しんでいたのかもしれない。
そんな自分を置いてひとり、家族から距離をとったルイが許せなかった。だからこそあんなにも激しくルイの言動一つに目くじらを立てる。弟の帰郷はただの懐かしさに駆られた行動ではなく、それ以上の意味があったのでは?そう察したからこそ、この家を守っていくための彼なりの防止策だったのだろうか。そう考えるとアントワーヌからしてみればルイは他人の部類に入っているのだろう。

この家族が孕む重苦しくて、どことなくぎこちない空気。終盤では家族それぞれの思いを吐露し、相も変わらず空気感は最悪なのだが、母マルティーヌの次はきっと大丈夫、というセリフにグッときた。母だからこそ言える、柔らかに、愛を含んだ言葉。

鳥籠のようなこの一軒の家の中で織り成す人間模様。最後のカットの今にも息絶えそうな鳥の姿が余韻を残してくれる。

決して明るくもなく、家族ってほんと素晴らしいね!なんて言えるようなものではないけれど、間違いなくそこに存在する家族の愛。グザヴィエドランの描く愛はとてつもなく重たいのだ。
Shelby

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