Omizu

マドモアゼルのOmizuのレビュー・感想・評価

マドモアゼル(1966年製作の映画)
4.5
【1966年キネマ旬報外国映画ベストテン 第7位】
『トム・ジョーンズの華麗な冒険』トニー・リチャードソン監督作品。カンヌ映画祭コンペに出品、英国アカデミー賞では衣装デザイン賞を受賞した。

すごい映画だった。ジャンヌ・モロー演じる女教師が徐々に暴走していく様を描いているのだが、その溢れ出るエロスと暴力性にやられた。

「マドモアゼル」と呼ばれる女教師が村に住むイタリア人と親密な関係になり、彼を独占したいあまり過激な行動をとるようになる。静かながらも内に狂気を抱えたジャンヌ・モローが素晴らしい。

彼女の抱えている鬱憤はおそらくセックスレスからきていて、イタリア人に執着する様が怖くもあり哀しくもある。そこをリチャードソン監督は上手く描いている。彼女の一挙手一投足に注目させる。赤裸々なセックス描写は『トム・ジョーンズの華麗な冒険』とも通じる。

正直リチャードソン監督といえば「なぜこれが作品賞?」の代名詞でもある『トム・ジョーンズ』の監督という印象だったが、本作を観ると納得できる。確かにこの時代にこうした新しい描写は革新的だったのだろう。アカデミー作品賞としてではなく、やはりイギリスのニュー・ウェイヴの一員としてみるべきなのだ。

本作はリチャードソン監督の才能が爆発していると言ってもいい鮮烈な作品だ。もちろんジャンヌ・モローの力というのもあるがやはり作家映画。リチャードソン監督の作家性が強く出た作品だろう。

最後まで気が抜けない展開力に刮目せざるを得ない。「マドモアゼル」のすること、そして執着されたイタリア人の男、さらにその息子の関係性が恐ろしくも面白い。
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