MaTsuMo

あの日のように抱きしめてのMaTsuMoのレビュー・感想・評価

あの日のように抱きしめて(2014年製作の映画)
3.9
なるほど、勅使河原の『他人の顔』と似た入口ではある。
だが、他人の顔では女は「気づいてたわよ最初から!」というのに対し、本作は最後まで一切気付かないのが、男の見つめる先があくまで金でしかなかったことを強調させて切ない。
まあ最後、彼女の歌声で気づけたのは良かったけど。

主人公と夫の差を感じさせるところとしては収容所の出来事をどう話すかのシーンでも印象的だった。
主人公が収容所での話を伝えた方がいい、例えばこんなことがあったのに気にしない人なんていない…と言うのに、男は必要ない、美しく収容所から戻ってきた君がいいのだ、と言い張る姿が彼らの体験の差を無自覚に表していて虚しい。
(密告した?という立場ではあるけど)同じユダヤ人の中でも収容した人に寄り添わない姿というのは、映像や話でもあまり見たことがなかったのでそこも新鮮だった。

ウッドベースを弾くメロウな音楽が繰り返し流れるのだけど、ラストシーンで美しく回収される。
彼女の執着ともいえる一途さが表れていてとても良い。
単純にテーマソングがさまざまな編曲で聴ける映画が好きなのかもしれないけど。

スピーク・ロウ
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