パンケーキレンズ

ディーパンの闘いのパンケーキレンズのレビュー・感想・評価

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)
4.0
ジャック・オーディアール監督の「犯罪」と「孤独」が、遂にフランスの移民問題を切り込む時が来たか・・・

脚本家以外はスタッフを一新
素人俳優を起用して
しかも言葉の通じない撮影現場
これが、監督にとっても新たな「闘い」であった事は言うまでもなく、映画を支配するのではなく、常に変化し続ける現実(現場)に自分を近づける作業を繰り返すことによって引き起こされた溢れる想像力が、鮮烈さを纏ってドラマティックに迫ってくる♪

そう、社会派映画ではあるんですけど
どこまでも、ドラマな映画というか・・・
現実を現実としてしっかり捉えていながらも
映画は「想像」であり「創造」であることを、改めて思い知らされた

祖国の紛争と
移民先の抗争
2種類の暴力の狭間で引き裂かれたディーパン

「通じない言葉」と「3人だけの秘密」が、絶妙なサスペンス性を発揮すると同時に、彼らが直面することになる「移民問題の本質」が赤裸々に綴られる

印象的だったのは、移民である彼らはもちろん「孤独」なんだけれど、マフィアのボスや、その護衛の若者なんかのフランス人も、一様に孤独に描かれていること

貧困や格差社会で生きる若者たちの社会問題

自己を確立できずに社会に馴染めない移民達

それぞれの「孤独」が膨れ上がり
それら全てがフラストレーションとなって終盤に大きく爆発するのは、まるでジャック・オーディアール的・テロの解釈のようでもありました

フランスの移民問題を扱った映画は沢山あるし『サンバ』なんかの軽い系もあるので、王道のテーマではあるんですけど、人物を等身大に描くリアリティの中に、人が本来持っている「激しさ」が鮮明に描かれているのは、さすが「つるぴか」オディアール監督と言ったところですね♪

最初の印象を上手く裏切ってくるキャラの描き込み

あ、こんな一面もあるのか~と
まるで、新しい人と出会った時みたいな、徐々に掘り下げる人物描写が、かなり効いてましたね

暴力によってしか未来は切り開けないのか

血を流すことでしか大切な人を守れないのか

あまりに美しいエンドクレジットに
現実が突き刺さる
そうではない社会を願う
そして
希望が溢れだす・・・