鹿江光

獣は月夜に夢を見るの鹿江光のレビュー・感想・評価

獣は月夜に夢を見る(2014年製作の映画)
2.0
≪40点≫:なぜ今、性を寓話化するのか。
つまらないというよりは、退屈な作品だ。ノルディック映画特有の灰色感というか、静寂感は見て取れるが、それもこれも全部が形だけを真似した継ぎ接ぎだらけのもの。
ストーリーも既視感を覚えてしまうような内容。人ではない者が人間との間で愛を探り、感情が揺れ動き、少女はやがて大人になっていく。
トーマス・アルフレッドソンの作品に似たような話があったが、あれとは雲泥の差。『ぼくのエリ』は雰囲気、展開ともに申し分なく面白い。静寂の中に重みがあるし、鼻を刺すような冷たい匂いさえも漂ってきそうな演出がとても魅力的だった。
もちろん本作は泥の方である。百歩譲って、若い男女が突然恋に落ちるのはいいだろう。ただ、「ずっと一緒に居続けよう」と覚悟するほどの愛は、画面上には映ってないし、描かれていない。ページの抜けた絵本を読んでいるかのようだった。それなのに、やたらと悲哀に満ちた演出をしてくるから、余計に質が悪い。
そもそも何故、二番煎じをしてまで「性の寓話」を描きたかったのか。少女が人ではない者へ変貌していく、つまり性を知り大人になっていく過程を、何故今テーマとしたのか。かなり語り尽くされたテーマであるが故に、この手の作品は個性を出しにくいし、棲み分けも難しい。
案の定、本作は退屈だった。既に邦題からして推測は容易い。それでいて、その推測の域を決して超えることはない。つまり、全てが想像の範囲内にあり、結末を知りながら観ているようなものなのだ。
感情移入する前に物語が終わっていく。観客を置いてけぼりにしたまま……。強いて言うなら、主演の女優が美しいくらい。でも変貌してからはB級感満載。出来の良い自主制作映画のよう。
そして最後に、雰囲気重視で創っているなら、あのエンディングのテーマ曲みたいなのは必要ない。ちゃんと最後までコンセプトを徹底して欲しかった。
鹿江光

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