とり

グランドフィナーレのとりのレビュー・感想・評価

グランドフィナーレ(2015年製作の映画)
5.0
邦題の大団円、終局から受ける印象とは映画はちょっと違うかもしれない。
原題はYOUTH、この映画で言いたいことはタイトルで言ってますよってくらいストレートに”若さ”。

とにかくマイケル・ケインを軸に広がる世界、画面が美しい。
演技、音楽、光、映像。
陰影、配置、配色、キャスティング。
一皿の料理、一点の花、一幀の絵、一冊の本。様々な要素が完璧に組み合わさった状態のものに対峙する時の気持ちになれる映画。

哀愁と滑稽さ、エロスとタナトス、強い陰影が描く室内のリアルと柔らかな陽の下の非現実的。
すべての場面が、誰かが”若さ”についてを感じる画面。
活き活きとしているとか若いなぁってだけではなく失っていく過程であったり振り返った向こう側にある演出だったり、
人が演じるだけではなく物や風景、映画に敷き詰められた美意識の全てが語りかけてくる。

私が受け取ったものと人が受け取るものが、いつも以上に全然違うだろうなと思う。
二度目に見た感想も、数年後の私が見た感想もがらりと違うかもしれない。
今作はその全ての感想が認められているように感じる。(個人の感想を否定される訳もないのだけれど…)
画面の中に既に拒絶も肯定もあるから。

原題YOUTHを若さと記したが、サムエル・ウルマンの詩を先ず思った。有名な訳は「青春」である。
”臆病な精神のなかに 
青春はない
大いなる愛のために発揮される”
描かれているのは青春。どこで青春を迎え、感じるは人それぞれ。この映画も同じ。


(16/4/20)
とり

とり