Aki

グランドフィナーレのAkiのレビュー・感想・評価

グランドフィナーレ(2015年製作の映画)
3.5
終始才能というものが全く感じられない凡作。「人生に行き詰った人間たちの倦怠と日常」とやらが投影されているであろう「円環」のファーストショットが妙に単調な時点で嫌な予感がしていたのだけど、その後もただ撮っただけという魅力の無い単調なショットが続き、こちらの五感が全くと云っていいほど刺激されない。こんな体験は久しぶり。(もちろん、この円環のイメージは何度も反復される。ファーストショットのステージはその後も何度か利用されているし、マイケルケインが鳥籠越しに俯角で見るマッサージ師と遊具にも円環は現れている)
マイケルケインのカウベルの指揮筆頭にハッタリが多い。絶望した映画監督の前に女優の幻影が次々と現れるのはどうせフェリーニの『8 1/2』への目配せなんだろうけど、それも単にあざといだけだし、文字通り余りに悪趣味なレイチェルワイズの悪夢のモンタージュには劇中の本人が感じたのと同様、ウンザリした。それでも鳩時計の多さの執念にはうっかり感心したし、ショットはそれなりにキレイ(美しいとは言わない)なので、辛うじて見続けることはできるが、何か褒める箇所を挙げるとすれば、主にロケーションのみということになる。Mark Kozelekの挿入曲は良かったが使い回しだし、EDMみたいな音楽が2,3度かかってたけど冗談なのか知らないけど本気で良いと思っているなら、パオロ・ソレンティーノ、音楽センスも相当無いと思う。『ロブスター』もそうだったけど、作品の主題を徹底することで作品そのものが歪に退屈になっている作品の典型例。こんなに退屈な作品ならショット数えときゃ良かった。あと適当に記号が並んでるんで試しに誰か読み解いてみてほしい。尤もこれだけ表層が死んでるのであれば、評価に値する作品とは言えないだろうけど。あるいは自分も人生の辛苦をなめ尽くせば本作を楽しめる境地には至るのかもしれない。
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