きぬきぬ

グランドフィナーレのきぬきぬのレビュー・感想・評価

グランドフィナーレ(2015年製作の映画)
4.0
これ、邦題が悪い!これはまだ決して‘フィナーレ’ではない。失望や絶望した者の悲しみもあるけれど、まだまだ欲望も希望も未来もあると感じた。
原題は「YOUTH」宿泊施設の意であって、スイス/アルプスの高級ホテルに滞在する人々の姿が描かれている。主人公となる、英国女王にオケの指揮者を望まれるくらい高名な音楽家以外にも、その旧知の映画監督や有名俳優、スポーツ選手など、ホテルのサービス含め庶民には浮世離れした世界。そこに滞在出来るのは人生の成功者ではあるけれど、彼らもそれぞれに孤独や苦悩を抱えている。老いたる者たちは過去を顧み(省み)、若い世代には生への希望と野望と夢がある。外界から遠くにあっても現実からは逃れられない。欲望も希望も失えば、生も死も関係なくなる。それは裕福であろうが貧しかろうが関係のない普遍的なもの。それでも外界から遠いホテルでは、過去現在未来が交差し、現実の中にファンタジーが混ざり込む。
老音楽(作曲)家が、自然の中で指揮を執る様など、とても素晴らしい光景!「YOUTH」は度々とても美しい!密に描かれる現実は厳しくもあるのに、ユーモアに満ち溢れ(ダイアローグが素晴らしい!)、欲望でさえ自然で、とても穏やか。
使用される音楽もその場面も幻想的で素敵!
もちろん役者皆素晴らしい!
マイケル・ケインもハーベイ・カイテルも言わずもがなで、レイチェル・ワイズのチャーミングさもポール・ダノの秀逸さも改めて解るし、ジェーン・フォンダには恐れ入るし、脇役ながら老音楽家のマッサージ師でもあるホテルの従業員役Luna Zimic Mijovicの矯正中の歯も、ダンスの場面も若く健康なエロティシズムでとても印象に残ってる、彼女素敵だ!

素晴らしい瞬間が幾つもあって大好きなだけに、平坦に見えてしまったクライマックスが、音楽が素晴らしいだけに撮り方が実はとても残念。でもラストカットはとても好きだ。

映画監督フランチェスコ・ロージに捧げられていたけれど、ロージっぽくは決してないけれど(苦笑)この作品は素晴らしい!(って何度書いてる?苦笑)
きぬきぬ

きぬきぬ