享楽

グランドフィナーレの享楽のレビュー・感想・評価

グランドフィナーレ(2015年製作の映画)
4.0
邦題の「グランドフィナーレ」が割と反感を買っているようですね、確かに題材としては音楽的な要素よりもそれこそ原題の「YOUTH」若さないし青春の方が印象深いですが長き人生、老いた今過去を振り返って人生を音楽と比喩しそれを「グランドフィナーレ」と称するならどうでしょうかね…?
題名は物語の本質的な要素ではないので措くとして総括して感想を端的に述べると様々なバックグランドを抱えた若き人々と老いた人々とを対比させ老いの視点から観た人生観と若さの視点から観た人生観を想起させるような会話劇が1番印象的。音楽演出も勿論文句無しに好きだし美しいがヒューマンドラマ的要素が色濃い。老いるに連れて人生の事運びが上手くいかなくなり無力感に苛まれ豊かながらもどこか寂びしさを感じさせる描写を称賛したい。
またキャラクターとしてかなり好きだったのがポール・ダノ演じるジミー・ツリー。あのアンニュイな雰囲気が最高。ジョニー・デップの個性的な雰囲気にブラッド・ピットのラフさを掛けたような感じ。きっとホテルの人々を俯瞰し楽しんでいるんでしょうね。
なんせフレッド(マイケル・ケイン)とミック(ハーヴェイ・カイテル)の会話劇が面白い。ホテル内に異種混合に人々が接触する中2人が幼馴染で彼らの子ども達がトラブって…の下りはどこか微笑ましい。
ただ1つ残念なところがどこかクライマックスの盛り上がりに欠けた。個人的に音楽的な感動受容器が小さいところがあるかもしれないがどこかカタルシスの薄さは否めない。情動がイマイチ揺さぶられなかったですが皆さんはどうだったのでしょうか。
といったところでクライマックスの盛り上がりに欠けるところと締め方がイマイチな感じ以外はコメディー的に面白く絵画的に美しく人間ドラマ的にも感慨深い。もう一度じっくり鑑賞したい作品。
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