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サウルの息子のodyssのレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
3.5
【映像の特異性にご注意!】

2015年カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ(最高賞はパルムドールなので、いわば準優勝)受賞、2015年アカデミー賞外国語映画賞受賞。

第二次世界大戦期のアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を舞台に、殺戮されたユダヤ人の死体処理などに携わる「ゾンダーコマンド」と呼ばれるユダヤ人サウルが主人公。
そういう役割なのでとりあえずは殺されずに済んでいるわけだけど、やがては自分も同じ運命をたどると分かっている。

そんなサウルが、殺された若いユダヤ人を自分の息子だと言ってユダヤ教のきまりに従って葬ろうとする、というあらすじ。

しかし殺された若いユダヤ人が本当に彼の息子なのか、実はよく分からない。作中ではそれを否定するセリフも出てくる。
要するに、一人の若いユダヤ人を正式に葬ることが、主人公にとっては地獄のような強制収容所にあって唯一の救いとなっているわけだ。

この映画の特異性はそうした筋書きにだけあるのではない。
映像は絶えず主人公サウルの頭部を映し出し、そこから見える、つまりサウルの目に映る部分のみを映像化している。めまぐるしく画像が動き、焦点はぼやけ、映画を見ている側を疲労させる。地獄のような収容所の内部が、このような映像により観客にも感得されるというわけだ。

悪くない作品だとは思うけど、映像にそうした特異性があるので、そのつもりで覚悟してご覧になることをお薦めする。
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