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ロブスターのyokoのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
4.5
ランティモスは聖なる鹿殺し、女王陛下のお気に入り、と今作ロブスターを視聴、見る順番を間違えた気がしなくはない。

ロブスター、近未来かディストピアかそういう設定の、独身者に厳しい時代背景の設定であり、町で独身者がぷらぷら歩いていると施設にぶち込まれる。独身者は婚活パーティー的な施設に入れられカップルを作らされる。しかし45日以内にカップルにならなければ好きな動物に変えられる。で主人公の好きな動物がロブスターってわけ。

まずコリン、聖なる鹿殺しと同様吹き替えの人が良い、他のコリンのマッチョな吹き替えの人より淡々としていてこの2作は合っている。

まず連想したのはユアンスカヨハのアイランド、ブラックミラーのHang the DJ 。あとエボリューション。観てないけどビバリウム。

不思議なことだらけで、まず独身者は許されない社会の設定、これはわかる。だからカップルを作らせる施設、これもわかる。できなければ動物に変えられる。なんで?しかも好きなやつに?ディストピア系やビッグブラザー的にいうなら半ば知恵遅れ的な洗脳済みの下層人種を育成するため強制的にカップルを作らせるという話ならわかる。そして違反者は処分される。そうではなく単に動物に変えられる。それに抵抗する人間がいる、これはわかる。でもそこは恋愛禁止、何で?だいたい管理側に対抗する組織はフリーなムードを標榜するものだがこちらも管理だ。

体制側がもっと強行に出たり、独身者がもっと焦ってカップルになりそうだと思うがそういう空気でもない。なんか嘘ついてまでやるのは良くないとか、期限1日なのに不成立も気にしてなさそうで、不成立の危機感がそんなにない。独身者だからイケてない人の集まりかといえばそうでもない。一般人と同じくらいの割合で美男美女もいる。コリンが早速トーマシン風のアイドル系にアプローチしてたのは面白く、機能不全とかゲイ説も疑って観ていたのだがただの面食いやんけと笑ってしまった。いかにもビッグバンセオリーに出てくるオタクの集まりとかなら楽なストーリーになるだろうが笑。

オナニーは罰せられるが、鼻血でカップルを取り繕うのは罰せられない、嘘カップルはどこまでがアウトなのかその線引きが気になる。

女王陛下のお気に入りのエマストーンの手コキ
聖なる鹿殺しのニコールキッドマンの手コキ
ロブスターのメイド(ランティモスの奥さん)の尻コキ
ロブスターハンターの尻コキ、セックス

これらは全部無表情であり、義務的なシーンだ。イヤイヤ感を押し殺した無とも違うのだ。ランティモスの腹づもりは何だろうかいわゆる普通の性愛は信じていないのか、セックスとそもそも生殖目的の行為であるというメッセージ、それかその反対の皮肉?シンプルにそういうフェチか、他作で合わせて考えるなら一番かなと思うのは結局は男性の性欲を女は無でコントロールしているということか。リベラルぶっても個人的に共演者と結婚する監督は萎えるのだが・・・。もっとノエとかトリアー的な開き直った底意地の悪さを出してくれればいいが単に賢ぶっているだけのような気もする。

とは言いつつ前半はだいぶ面白く金髪美女がポニーに変えられ立髪が金髪になったのは意外に親切設計で爆笑。しかし後半明らかに失速したのはレアセドゥが原因、前半の緊張感は女ハンターの不気味さに準拠するものだがレアは彼女を超えることはなく強さの説得力もあまりないので怖さがない。メイド、ハンターの二人の好演に比べると一枚劣るかなあ。

一番の謎は作品内で最初にカップルになったベン・ウィショーの子供だが十歳くらいで登場し、いつできたんだ?連れ子とかではないと思うが、血が繋がってなくカップルになると子供はあてがわれる、血はつながっているが急速に成長させられ渡される。こういう世界なのかな?

収容者がイケてない訳ではない、そんなに慌ててるわけではない、好きな動物に変えられる。的なところから現実ではなくブラックミラーのHang the DJ (the smithsの名曲、おそらくシステムに抗えをモチーフにブラックミラー版では使われた)のようなシミュレーション内の出来事ではないかなとも考えた。Hang the DJは1000回シミュレーションのうち997回か998回だっけかな、カップルが危険を犯し出口に辿り着けばマッチング成立という、マッチングアプリの仕組み内部を映像化したものだがこれに近いかなと。最後目を突き刺していれば合格みたいなwそもそもどの登場人物も感情の鮮度が荒いというか。ゲームの登場人物みたい。

体制 お見合い結婚 つまらないダンスを二人で踊る
反体制 オナニー派 一人でテクノで踊る

真ん中 一応恋愛派はコリンとレイチェルワイズになるのかな?明確にそういう派閥を書かないことで恋愛讃歌なのか、シンプルに恋愛禁止と思っているのか、現実より一つ下の層の話で外側に恋愛があるのかもしれないがどうだろうか?

最後コリンを待つレイチェルワイズの窓越しに二人の中年カップル(ただの知り合いの二人のようにも見える)が通り過ぎる。

ロブスターが一番な理由を主人公は長生きできる尊敬されると答えていたが、両腕に武器があるバルタン星人はそのままでは君を抱きしめられないの象徴ではないかと考えた。つまりナイフを捨てないとバッドエンド。
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