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ちはやふる 上の句のじゅんPのレビュー・感想・評価

ちはやふる 上の句(2016年製作の映画)
3.0
かるたの迫力!正直、緩急の緩の部分は演出による緩というよりはただ緩いだけだったし、キャストも別に緩急つけた演技なんてしてなかったけど、かるた中の急がしっかり撮られてるから、何だかんだ千早はかっこよかったし、映画も引き締まって見えた。純粋に撮られるという場面においては広瀬すず無敵!

以下、蛇足。
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「マンガ的表現」の意味合いが履き違えられたまま、スタンダードになりつつあるんだと思う。

今作でその割りを食ってるのが千早と肉まんくん。

まず千早。広瀬すずの存在感で有耶無耶になってますが、キャラクターとしては少なくとも上の句だけ観る限り空気。(マンガ的)にデフォルメされたコミカルさが悪目立ちしていて、真面目なセリフの説得力が死んでいた。他の人も含め、キャストは求められたことをきっちり遂行してるんだろうけど。

肉まんくん。原作でどんな立ち位置のキャラなのかわかりませんが、脇役であの軽さを出せるキャラって本来おいしいと思うんです。でも千早を筆頭に他の人も振り切って軽い演技してたりするので、彼が全然目立たない。ただのちょっと無神経でアホな子みたいになっちゃってる。

一方、良かったのは太一と机くん。
上の句はほとんど太一の話だった。描き足りてるかと言われると、口を濁さざるを得ないけど、彼の抱えてるものは誠実に描かれてた。
机くんに関しては口を濁さずハッキリ言うけど描き足りてない。あと5分、いや3分でいいよ、素晴らしいキャラなんだから彼のことをもっとちゃんとすくいあげてくれ。
描き足りてないでいうと新もそうですね。上の句/下の句と分けたにも関わらず上映時間111分に収めてこの感じなら、結局興行上の都合なのかなと勘ぐってしまう。

時間でいうともう一個。
序盤、部をつくるため千早が勧誘チラシ貼りまくるシーンで、教師がモブ生徒たちに「早く教室戻って!」みたいなこと言うんですけど、始まってからずっと同じ日の出来事だと思って観てたんで、「これ放課後じゃないの?教室戻れってことは別日の朝?」ってなった。まあそれ自体はどーでもいいんですけど、全体に通底して時間の経過というものが疎かにされてる感じがしました。そのふわっとした空気の積み重ねの結果「こんなに短い期間でこんなに頑張ってこんなに成長した」の「こんなに」が何とな〜くしか伝わってこない。彼らの成長を「見せる」ためのロジック自体は用意されていたので、それを下支えする基礎がぐらついているのはちょっともったいなく思えました。
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