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さらば冬のかもめのmasatのレビュー・感想・評価

さらば冬のかもめ(1973年製作の映画)
2.6
1973年、この頃になるとアメリカン・ニューシネマ=ロード・ムービー、という体裁になってきた。
しかし、この頃になると、ゴールが解らなくはないし、死が待っている訳でもない。
“そこ”へ到着した時の感情と、明日をどうするか?を鮮やかにキメられるか!?の勝負となる。

本作でもそんなアメリカン・ニューシネマの成熟が発信されている。
ハル・アシュビーは明確。そして、これほど優しさが画と役者の眼線から溢れる作家は、ニューシネマにはいないのではないか。歳の差60歳カップルのラブストーリーからヴェトナム後遺症PTSD映画へと一目散な彼の勢いを感じる。

熱血熱演ジャック・ニコルソン以上に、ショボイ万引き癖が人生を悪化させた(若き日の)ランディ・クエイドの19歳童貞海軍兵の行き場のない哀しみが胸を打つ。
ナインティーン・・・ヴェトナムで死んだアメリカ兵の平均年齢。
そんな青年が、なんとか最後に望みをかけるのが“南妙法蓮華経”・・・
そんな奇怪な展開もあるが、青年のそんな訳の解らない宗教へと“縋りたい”やり場のない精神性、そんな感情を護送する2人の男。19歳の青年の手旗信号も呪文の様な南妙法蓮華経も、何処にも届かなかった。
まさにスッキリしない、やるせ無さが焼き付くが、ラストカットのトボトボながらも、強く歩いていく2人に、そのバックショットに、明日を感じさせるではないか。
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