TaiRa

さらば冬のかもめのTaiRaのレビュー・感想・評価

さらば冬のかもめ(1973年製作の映画)
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続編小説も映画化されたので予習も兼ねて。ジャック・ニコルソンがカンヌで男優賞貰ってるのも納得の名演。

盗みを働いた新兵を海軍刑務所まで護送する2人の海軍下士官。新兵が盗んだのはたったの40ドルなのに(しかも未遂)、8年の懲役を科せられる。司令官夫人の設置した募金箱から盗もうとしたから。それだけの理由で18歳から26歳までを刑務所でいたぶられて過ごすのだ。下士官2人は一週間の護送期間の中で彼に人生を教える。初めて酒を呑ませ、喧嘩をさせ、女を抱かせる。3人は旅をしながら友情を育む。そして終わりは呆気なく、さよならも言えずに虚しくやって来る。ジャック・ニコルソンのワルな兄貴風が堪らなく良い。ホテルで呑んだくれてランディ・クエイドに手旗信号を教えるシーンのユルさ。オーティス・ヤングが「映画観てんだから後でやれよ」と言うとカットが変わり、ちゃんと終わるまで待ってた事がわかる。ベッドをどうするかのくだりもユルい。ふらりと入った仏教コミュニティの「ナンミョーホウレンゲーキョウ」も不思議なユーモアになりつつ、お題目を唱えるしかない新兵の行き詰まりを表す。酒場で知り合った女のホームパーティーでジャック・ニコルソンが女を口説こうとする場面も面白いが、この相手の女の子がナンシー・アレンで驚く。これが彼女のデビュー作。デビューと言えば撮影のマイケル・チャップマンもこれで撮影監督に昇進した。ドキュメンタリータッチの中、叙情的なショットや艶かしい夜の撮影が素晴らしい。雪の降り積もる公園でバーベキューをする画のおかしみ。手旗信号のメッセージからの追走劇という緩急の付け方も上手い。編集出身のハル・アシュビーだけあってかオーバーラップなんかを多用した編集が印象的。
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