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アクアマンの景のネタバレレビュー・内容・結末

アクアマン(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

人間と海底人の混血児アクアマンが王の自覚を持ち、英雄へと成長していく姿を描いたスーパーヒーロー・海洋アクション。評判がいいとは聞いてたけど、期待以上に娯楽を大量に詰め込んだ冒険活劇を見せられてもうお腹いっぱいになった。海底帝国の世界観を表現した美しい映像、個性的なキャラクター、勇敢なヒロイン、愛憎で繋がる家族のドラマ、アーサーとメラのベッタベタで軽妙なロマンス、空間を意識した長回しのアクション、現在と過去回想の入れ替わりやシチリアでの二つのバトルを同時進行で見せるシーンなどのシームレスな演出、と良かったところを上げるときりがない。あと事あるごとに爆破させながら進行していく映画だと教えられたんだけど、予想以上にいちいち爆発するから笑ってしまって集中できない時もあったのが楽しかった。そういう雑なのに許せてしまう豪快さも『アクアマン』を快作たらしめたのだと思う。というわけで、大満足の一言に尽きます。見終わった後にめっちゃニコニコしてたもんな私。やっぱりDCEUだと『BvS』が一番好きだけど、娯楽の暴力を喰らった時の充足感は『アクアマン』が圧倒的でした。

とにかく『JL』でのアーサーの活躍が不完全燃焼で終わっただけに、存分に暴れるアーサーを見られたのが嬉しかった。異種族とのハーフで王子だし、師匠に鍛えられるシーンもあるし、伝説の武器を取りに行くし、砂海王国で『インディ・ジョーンズ』もやるし、なんつうか正統派RPG感を真っ向から具現化してる感があるのがまたいい。終盤には『海底鬼岩城』を思い出したのもあり、ジェイソン・モモアによる大長編『ドラえもん』映画を見ている気分になった。名前がアーサーだから最後に「アーサー王」になることで綺麗に着地するのも気持ちいいんだよな。トライデントもアーサー王伝説の選定の剣のそのものだったし、そこは意識してるっぽいけども。あとアーサーはヒーローらしい決めポーズをするのがクッソ楽しい。今までいくつかヒーロー映画を見てきたけど、こういうことをやってくれる主人公はあまり見なかった気がするんですよね。巨大な海獣カラゼンを従えるアーサーとかラストの画とか、いちいちヒーローとして絵になっているのが最高。

あと母との再会もぐっと来たけど、玉座争いの決闘で敗北して王の何たるかを模索していく流れから、「海を守る王」を越えて「海と陸を守るヒーロー」への資質を問う流れへと昇華していくのがあまりにも熱い。ここはちょっと震えた。ヒーロー映画の重要なところをきちんと決めてくるもんだから、思わず泣けてしまった。

しかしオームはちょっと可哀想だったな。許嫁も参謀もアーサーの味方ってのが寂しいし、母を失った哀しみと海を守りたいという気持ちから彼は暴走してしまったのだと考えると切ない。そもそもオームがああなったのは、バルコにも責任があるんじゃないのか。いつから気づいてたんだろなバルコがアーサーを鍛えていたことに。直接「あなたは王の器ではない」と指摘するならともかく、遠回しに否定されたも同然でこれは辛いだろうなと。そうした弟の悲哀と、パトリック・ウィルソンの演技もあってヴィランとしても申し分のないキャラクターだったと思います。

ブラックマンタも出番は多くはないけど、アクアマンを憎悪するようになる理由が明確なのがいい。オームが母をアーサーに奪われたと考えたことでヴィランになったように、彼は父をアーサーに見殺しにされたことでヴィランになった、という対比も効く。『アクアマン』という作品はハッピーエンドで終わったのも最高だったけど、一方で彼だけ救済されてないからか、ブラックマンタは続編でもアクアマンの脅威となりそうなのが楽しみです。
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