YusukeHorimoto

この世界の片隅にのYusukeHorimotoのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.6
⭕️初見

第四十回日本アカデミー賞最優秀アニメーション賞受賞。2016年度キネマ旬報ベストテン1位獲得ということで鑑賞。

これはもうマジの名作でした…。

日本が世界に誇るアニメーションという技術、それが伝える力をひしひしと感じさせられます。
最早、この国では実写もアニメもメッセージ性や内容から、時に平等な評価基準であるということを指し示してる映画でした。

素晴らしい。

◼️2Dアニメーションを最大限に活かした表現。

基本的には、定点からのワンカットが切り替わっていくシーン展開で進められていく。これは、主人公のすずは絵を描くことが好きという設定に合わせて、描いた絵が動いて切り替わっていくという粋な演出。
アニメーション独自の表現方法で、今作はすずの半生を描いているので、長いスパンをテンポ感よく眺めていけるので非常に良かった。(続編ではこれをさらに深く掘っているそう)
絵を舐めるようなアングル調整も駆使しつつ、特別なシーンでは、時にモノクロでシリアスな雰囲気に、時に色鮮やかで独特な雰囲気にも表現されていて、どこをとっても素晴らしい作画だったと思います。

◼️シンプルに脚本が良い。

内容は非常にシリアスで、舞台は広島県広島市(幼少期)と呉市(一応メインの舞台)。

第二次世界大戦下の庶民の日常を切り取っていて、意外と戦争映画ではこういった切り取り方をされるのは珍しくも感じるので、そこで新鮮さを感じる。
貧しい中での知恵や、国が推し進める戦争へのリアクションなども良く描けていて、悲惨な状況にはつい移入していく。これに関してはコミカルにも描いていて、どんな状況にあっても希望や活力を失わない国民性を表していた。

伝え方としては、いくらでも“泣き”を誘導させるような演出はできただろうに、それをさせないというところには個人的に良さを感じた。

主人公すずのキャラクター設定がめちゃめちゃ良いというところがまずあるのだけど、前半から後半への感情の持って行き方が異常なまでに良い。色々なものが徐々に欠乏していく様に思えたのだが、急展開で加速し、一気にこの映画の重さを感じる。

それと、基本的には完全な主人公主観でそれに移入する様な演出が施されている。
主人公は、馴染みやすい設定なので、非常に入り込みやすくなっていて、自ずとそこが中心世界と感じるようになっているのだが、ふとした演出などから“世界の片隅”を気付かせるように感じさせられ、その瞬間だけ客観に持っていかれる。この演出はこの映画の醍醐味であって、本当に良くできている点だと感じた。

◼️総評

日本アニメーション界に残る傑作であることは間違いない作品でした。
方言でのセリフ回しによる伝わり方とか、リアルだけどファンタジーにも描いているところとか、語りたいところはまだまだ沢山ありますね。

これは“日本映画”として一度は観ておくべき作品かと思います。おすすめ。

《好きなシーン》

マジで多いし、これに関してはほぼ全部なんだけど、ベタに主人公すずが幼少期に同級生の水原に絵を描いてあげるシーン。
その絵もセリフも全部素敵な素晴らしいシーンでした。ロマンチック。
YusukeHorimoto

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