このレビューはネタバレを含みます
冒頭は、平凡だがそれなりに幸せな日常を描き、後半主人公の女の子、浦野すずの右手が空襲の被害を受け、晴美を繋いだ手と共に失う。
其処からが、この映画の辛いシーン。
すずは、絵を描くのが大好き。いつも小さなメモ帳を持って右手で上手に描いていた。
その右手を失う辛さ。
慕っていた妹同然の晴海の死。
しかも、その失う原因は右手で繋いでいた晴海の手から爆発に巻き込まれ死亡……
結構、このシーンはつらい。
すずにとっての日常、其れは戦時中の苦しい生活ながらも、其処で生み出される何気ない日常。
それが、玉音放送を聞き、泣き崩れるすずは、また見ている者に更につらさへ追い打ちをかける。
「何で!今までの日常はなんだったの!?」と打ちしがれるすず。
今までの生活が、すずにとって「この小さな片隅に」であり、苦しいけど小さな幸せを享受できた。小さな小さな、でも幸せなそれが例え、世界から見たら片隅でも、幸せだった。
其れが、終戦という結末で、張り詰めていた心が瓦解する。
この苦しさ、悲しさ。
ラストは、観客的を、慰めるかの如くの、蛇足なエピローグが待っているが、すずの結末は、終戦のそのシーンに尽きると思う。
観客に精神的つらさを、しかも結構な重さをもたらす映画だが、今だからこそ、この平和な時代だからこそ、観て欲しい映画と感じた。
「君の名は。」を個人的には良かった「聲の形」も良かった。そして、今回の「この世界の片隅に」も、決して娯楽作とは言い難いつらい映画だが、悲しい気分にされられるけど、何か心に残る、そんな感じ。
しかーし、観賞後の余韻に浸りたく、プログラムを購入しようとしたら、先週の土曜日公開の映画なのに、もう売り切れ。
もう一回観たいな。ほのぼのとした絵柄が荒んだ心を癒してくれたので。ハイクオリティの鬼畜作画な「君の名は。」と違って、ほっこりするキャラクター造形。