もこ

この世界の片隅にのもこのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.9
「戦争」を悍ましく描いている傑作はたくさんあるけれど、「この世界の片隅に」は穏やかな日常を乱す圧倒的な暴力としてまっすぐ「戦争」と向き合っているように感じた。戦争は一市民であるすずさんの日常に絡んで流れていき、そこには難解な軍事用語も詳細な戦争の流れも描かれているわけではない。けれど、だからこそ戦争の恐ろしいが克明に描かれている(「風が吹くとき」みたいな)。
もしもこれがアニメじゃなくて実写化でも、すずさん役は絶対のんさんだったろうな〜と思えるくらいぴったり。気負いのない、のんびりしているのに感情を爆発させるシーンは迫力があって切実で、素晴らしい演技だった。戦時下という異常事態に翻弄されながら優しく逞しく生きていく人たちは、戦争を描いた作品においてあまり注目されない存在なのだろうけど、確かに存在しているんだと思わせられるし、そういう人たちのおかげで今の豊かさがあるのだろう。
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