勝沼悠

この世界の片隅にの勝沼悠のレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
5.0
 昭和10年代に広島から呉に嫁いだすずさんを描く。
 こうの史代の漫画を映画化。

 まず、アニメの不思議な質感に釘づけになる。本当に絵が動いていると感じる。声や音楽もその雰囲気にピッタリ合っている。『仁義なき戦い』で怖いイメージのはずの広島弁が暖かく心地よく感じる。
 この映画になぜこんなに心動かされるのか。それはこの映画が日常と戦争を地続きで描いているからだと思う。すずさん達女性は戦争と関係ない当時の時代背景の中で苦しみそれでも逞しく生きている。そこに戦争が少しずつ侵食していく。バラ色の日常に戦争がやってくるのではなく、苦しみも喜びもある日常に地続きに戦争が続いていき、戦争が苦しみを何倍にも増していく。そこから戦争が終わり、爪痕を残しながらまた少しずつ日常へと人は立ち上がって生きていく。その姿に感動したのだと思う。

 日本アニメ史上の最高傑作。
勝沼悠

勝沼悠