ことら

この世界の片隅にのことらのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.0
広島で生まれて広島で育ってきたから、物凄く引きずる物があった。

のほほんとした性格のすずさんの日常は苦しい中にものほほんとした部分があって、それが少しずつ少しずつおかしくなっていって、でもそんな事も「日常」に変わりなくてその中でみんなが少しでも笑える生活をしてて。
そうだよな。って、戦争が始まりました。生活が苦しくなりますってわけじゃなくて少しずつ蝕まれていくんだよ。

「うちはいがんどるんかもしれん」
ってすずさんが考えるシーンも悲しい。
「ぼーっとしたまま死んでいきたかった」
ってセリフが重みがあって苦しくなった。

あの後あの時代の人達は苦しくて苦しくて仕方ない日々を過ごして今の自分達がある。
忘れそうだし、正直現実味はないけど、たった、72年前の出来事。
72年前に私の曽祖母が実際に生活していたことなんだよな。

私の世代は曽祖母はがっつり経験してる歳で、祖父は疎開先できのこ雲をみたと語る。
曽祖母は私が生まれた頃にはホームでの生活だったが、母の話では当時のことは絶対に口にしなかったそうだ。
母の代でも、ギリギリバラックが河原に残っていたり、「被爆2世」であったりする。
二世にも差別があったり、原爆症で苦しんだ人達も多くいる。

被曝二世のことは「夕凪の街、桜の国」を観て欲しい。

生き残ってよかったばかりじゃない。
生き残ったのが辛い、なぜ生きているのかと泣く語り部さんの話も直接聞いた。

だから、観終わったあとは、自分の中で考えることが多すぎて、すずさんの事を考えると悲しくて、悔しくて、やりきれなくて、しばらく席を立てなかった。
まだまだ消化するのに時間がかかるけど、周りの人にはぜひ観てほしい。勧めたい。
いい映画にもいろいろあるけど、いい映画だった。
ことら

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