taka

この世界の片隅にのtakaのネタバレレビュー・内容・結末

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

全てを一瞬で変えてしまう戦争の凄惨な暴力と変わることのない人々の営みが対照的に描かれている。
戦争と広島をテーマとしながら広島市ではなく呉を描いていることも目新しい。

18歳で見知らぬ家に嫁いだ主人公のすずは後半の径子の台詞でも指摘されている通り「言いなりの人生」を生きてきた。
しかし、戦争で右手を失い、ハルミの死への自責、言いなりの自分では呉に居場所はもうない。
だからこそすずは自分で選ばなくてはならない。広島へ帰るのか、呉に残るのか。径子は言う「すずさんの居場所はここでもいいし、どこでもええ。つまらん気兼ねなしに自分で決め」
リンが言うようにそう簡単にこの世界から居場所がなくなったりはしない。選んだ道があれば選ばれなかった道がある。あのとき、すずが水原と一緒になることを選んだら、すずが右を歩いていたら、病院の予約が取れて広島へ帰っていたら、すずの今はなかった。
私たちは自分の居場所を探しているけれど、それはなかなか見つからない。自分が誰かの居場所になれたとき、その相手の中に自分の居場所が見つかるのかもしれない。居場所はそう簡単になくなったりしない。
戦争は終わり、正義はただの暴力だったことになる。正しさとはこんなにも脆いのか。それでも生活は続いていく。

原作では白木リンのことがもう少し掘り下げられているらしいからそっちを読んで、もう一度見てみたい。
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