みやび

湯を沸かすほどの熱い愛のみやびのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
4.8
これは悲しい物語ではない。
優しくて真っ直ぐで熱いほどの母の愛の話だ。

冒頭10分ですでに泣きそうになる。学校でイジメに遭う安澄を迎えにきた双葉のセリフ。
「安澄、その中で何色が好き?お母ちゃんは赤が好き。」

決して誰も責めようとしない。だけど、母が解決するのではなく娘にちゃんとイジメと向き合ってほしい。自分がこの世からいなくなっても強く生きてほしいとこれからの道を教える姿に強く心を打たれた。
いざという時のための下着。本当はそういう時のために双葉はあげたわけじゃないけれど、安澄にとってのいざという時は”戦う”時だった。安澄、強くなったね、よくやったと双葉の代わりに抱きしめてあげたくなった。

自分を置いて出て行った母親はもう帰ってこない。鮎子が泣きながら朝食中に頼み込んだお願い。心がヒリヒリと痛み、思わず涙が流れてきた。なんてここは温かい家族なんだろう。血が繋がっていなくても、しっかり鮎子は双葉の遺伝子を引き継いでこれから先の人生も生きていくのだと想像出来た。

旅の道中で知り合ったバックパッカーの拓海のバックグラウンドを聴いて、心から応援して道を正して母親のように抱きしめてあげる双葉。普通そんなこと出来ないけど、双葉に関わった人たちはみんな愛を知り幸せになっていくんだなと思った。

安澄の産みの親、坂巻さんにもそうだ。最初はなぜビンタした?!と思ったけど、あれも愛だったんだな。こんな可愛い子を置いていって!だったのか、気付いてよ!だったのかわからないけど、嫌いでブったわけじゃない。でなければあそこで嫌がる安澄を残していかないだろう。ちゃんと本当のお母ちゃんと話しなさいよという愛なのだろう。なぜ手話が出来るの?という理由もお母ちゃんさすがだなぁ…と思えて涙が止まらなかった。(中盤で交番に行きたがってる人の手話がわかるシーンがあったが、ちゃんと伏線も回収できていたんだなと好感度)

あとはラストですね。お父ちゃんなりの愛。
病院の外で組体操。こんなことしか浮かばなかった、と言っていたけど自分が一番(下の)支えになるからというメッセージが強く伝わってきて涙が止まらなかった。例えば娘二人を両腕にぶら下げる…という格好でももちろん頼りになる感は出せだのだろうが、きちんとこれからは自分が下からみんなを支えるからという意味として伝わってきて感動した。宮沢りえさんの演技も素晴らしい。

双葉が大好きな赤。煙も赤で染まってまるで天国にいく道中を見ているかのようだった。
一番ラストに、竈門の炎をバックにタイトルが映し出され、あぁ、これこそが”湯を沸かすほどの熱い愛”だったんだと気付かされる。

今年見た作品で一番の良作だった。
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