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湯を沸かすほどの熱い愛のgyaro311のレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
4.8
だいぶ泣かされました。
何度か嗚咽が込み上げそうになりましたが、
近くのおばさんがその度に、かなり先行して、
嗚咽をあげてくれたおかげで、我に返り、
大人しく見続けることができたと思います。
それでも2回ほど突然きた時は、堪えるために
ウッと短い呻き声を上げてしまいましたが…
満席に近く、横に座る、
見知らぬ人の震えが伝わってきました。
こういう劇場体験はなかなかできないものです。

今年の邦画は
『淵に立つ』にしても『永い言い訳』にしても、
「家族のカタチ」を描いたものが多いですね。
社会の最小基盤である家族でさえ、
今ではすっかり正解が無くなってしまった
時代だからなのだと思います。

自分も家族がいるので、
家族というものが如何に脆い関係性の中にいるか、
身に染みてわかっているつもりです。
分かっていても、
人はそんなに簡単に器用になったり、
賢くなったり、優しくなれないことも。

あくまで、そんな私の場合ですが、
映画で観たいのは、やはり、
『淵に立つ』まで追い詰められる家族ではなく、
『湯を沸かすほどの熱い愛』が包む、
家族の姿でした。
奇遇にも、双方の作品で、
赤色が「熱」の象徴として出てきますが、
やはり、人の発する熱は、最終的には、
人を前に向かせる力になると肯定したいのです。

ストーリーは、優しい伏線が幾重にも重ねられ、
深刻さの後には必ず優しい笑いが付いてきます。
この積み重ねが、人生や、家族における
「愛しさ」とは何だったか思い出させてくれます。

宮沢りえさんの、
これまでの人生経験全てを懸けたかのような、
心に響く演技。
ダメさで、愛しくさせてしまう、
オダギリジョーさんの存在。
全身で真っ直ぐさを体現した杉咲花さん。
編集のテンポも絶妙で、
演技の余韻が程よく沁みます。

それらが生み出したこの映画は、
愛しい人の死を体験させてくれます。
だから、どうしても泣けます。
そして、それを映画で知ることは、
とてつもなく幸せなことだと私は思うのです。

主題歌もよかった!
エンドロールの最後まで疾走し切った映画でした。
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