つぐみ

湯を沸かすほどの熱い愛のつぐみのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
3.6
評判いいけど、序盤全然乗れなくて「こ、これはシン・ゴジラ並みに置いてけぼりを食らうかも!!」と戦々恐々でしたが何とか杞憂に終わった。
ただ泣けたし、好きだったけど、満足感が全然ない。

ずっと主役がなんでりえちゃんなんだろうって引っかかってて(彼女の作品もほとんど見たことないけどさ)、無印良品の店員みたいな変なゆるい服着てても普通の主婦にしては綺麗すぎるし、舞台で鍛えた賜物なのか滑舌良すぎて、花形女優なのも良し悪しだなと違和感を拭えなかったんだけど(同じ理由でブッキーも奥田民生になりたいボーイやらなくていいと思うの…だって輝くフィールドが違うじゃん)病魔に侵されてからの苦しみ方が半端じゃなくて、「ああ、今この病に伏す演技がここまでできる女優さんが彼女しかいないんだわ」と納得したよ。ヒラリー・スワンクがハリウッドでやることをりえちゃんがやってるわけね。

それはいいんだけど、この作品に集中できないのは飛び道具が多すぎるから。
それぞれのキャラクターに深みを持たせるためとはいえ、ワケありな設定ばかりでそりゃあんだけ手数があれば「予想がつかない展開」って言うわ。
特にいじめの描写はもうちょっとうまくやってほしいっていうか、中学生日記かよってポップコーン飛ばしそうになりました。
それぞれのエピソードは全部見せ場があるのにうまく繋がってなくて、全体の満足度がガタッと落ちてしまった。
あと栃木が舞台なのにちょいちょい関西弁の人がいて何なのかと思った。

でも作り手の意図は分かるんだよね、全部見せたいって。
多分原作には書いてるんでしょう。
でも映像にしたらもっと削ぎ落としていかなきゃいけないんだろうな。
「いい話が聞けたから全部載せたい」ってのは伝える側のエゴなんだって、どこかで読んで私も書く側の人間なので反省しています(すぐ自分の話に持っていく)。

とはいえ松坂桃李くんの腕まくりが見られただけでもお金を払ってよかったとそこは満足しています。桃李くんをいやらしい目で見るなっていうのがどだい無理。


あと何がびっくりしたってあのタイトルバックな。
ここはテアトル新宿かって思うあのフォントでせっかく湯が湧きかけたのに氷水ぶっかけられたような衝撃でした。

とか何とか言いつつ、この監督の次回作にも期待します。
子役がいい映画はいいものです。
つぐみ

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