作中で登場した元SSの姿に、ハンナ・アーレントが語った「悪の凡庸さ」を感じずにはいられない。彼もまた、どこにでもいるような善良な市民の一人だった。
普通の、どこにでもいる人間が。簡単に人の命を奪っていた。それはドイツだけでなく、当時の世界中で起こっていたこと。日本も例外ではなく。
だからこそ改めて、司法の役割を考え直したい。この映画もテーマは良いのだけれど、描き方がどうも個人感情としての報復に流れていってしまっている。正義の側が悪を裁くかのような一方的な構図では、また同じことが起きてしまう。
僕も、あなたも。
状況が変われば、悪にも正義にもなりうるのだから。