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顔のないヒトラーたちのTigのレビュー・感想・評価

顔のないヒトラーたち(2014年製作の映画)
4.1
戦後ドイツの復興過程において極めて重要な事象であったフランクフルト・アウシュビッツ裁判が開かれるまでの物語。

個人的には帰ってきたヒトラーを観た後に本作を観て良かったです。
帰ってきた〜はシニカルなコメディ要素が終盤のシリアスな展開を引き立てる役割を果たしていたと勝手に思っているのですが、それ故にシークエンスが全体的にある種の軽妙さを醸し出していたのに対して、こちらはずっと重い直球の社会派ドラマなので、当然と言えば当然なのですが、より出来事を真剣に受け止めざるを得ず、辛くも心に響くものがありました。

かつての収容者が主人公ヨハンにホロコーストの恐ろしさを証言する下りがあるのですが、聴くだけで本当に身の毛のよだつ思いでした。
しかもそれだけの凄惨な出来事が当時の西ドイツでは黙殺されていた、知られていなかったという驚愕の事実。
そんな閉塞的な社会の中で、文字通り顔のない無数のヒトラーに立ち向かうヨハンと仲間達の姿に純粋に心打たれました。

この物語にも大なり小なり脚色はあるでしょうが、それを差し引いても戦後間もないドイツ社会の暗部、反対に徹底的な自浄作用を持った国民性という両端を垣間見る事が出来、大変勉強になりました。
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